月の輪通信 日々の想い
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父さん、神戸の個展の搬入日。 ここ何日か、締め切り間際の徹夜仕事続き。 カサカサに荒れた手。埃や釉薬で汚れた髪。しょぼしょぼと赤く血走った目。中途で倒れることなく、よくぞここまで。 それでも父さんはまだまだ自分の作品に納得がいかないで、梱包作業のギリギリまで工房の中を行ったり来たり。 「あと一点」「あともうちょっと」の攻防。
従業員のNさんがお休みなので、今日は一人で梱包作業。 出展する作品に番号のシールを張り、薄様(梱包用の薄紙)と緩衝材で包み、大型の段ボール箱にそっと詰める。 中腰の立ち仕事の上、何かと神経も使うしんどい作業だけれど、窯から出たばかりの新作に向かい合い一点一点丁寧に包むこの仕事は、一人で静かにやるのも楽しい仕事。 夕焼けの赤や晴天の青を真新しい薄様でふわりとくるんで、送り出す。 その嬉しさをじっくり味わう。
作品を満載した父さんたちの車を見送ったあと、うちへ帰ると食卓の上にオニイのお弁当箱。 ありゃ!オニイ、お弁当忘れた! PCを開いたら「今気付いた どうやら弁当を忘れたらしい」というメールが入ってた。
残ったお弁当は、帰ってきたアユコとゲンがハイエナのように群がって食べた。オニイの好きな塩鮭入ってたのにね。 お昼は非常食用(笑)のあんぱんとお菓子でやり過ごしたらしい。 部活もあるので、「腹ペコで倒れないように帰ってきなさいよ。寄り道するお金、持ってる?」とメールしておいたら、帰りに先輩とマクドナルドに寄ったらしい。
で、「今から帰る」の連絡があって、なかなか帰ってこないと思ってたら、「途中で自転車壊れた。今、自転車押して歩いてる」と 電話。 この寒空に真っ暗な道を、腹ペコヘロヘロで壊れた自転車をギコギコ押して歩くオニイ。 哀れ。 途中で自転車やさんが開いてて助かったというけれど、帰宅したオニイは疲労困憊のヘロヘロだった。
「ほら見てみ。母さんの弁当忘れていったら、ろくなことないでしょ。」 と笑う。 朝早く出かけていって、部活をおえて家族の夕食もすっかり終わった頃にようやく帰ってくる高校生。なじみの絵日記書きさんは「お弁当は母から子へののお守りのようなもの」とおっしゃるけれど、今日の災難続きでオニイもお弁当に込めた母の怨念を思い知ったことだろう。 明日はオニイの好物の魚のフライを入れてやろう。
BBS
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