月の輪通信 日々の想い
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先週からようやくオニイが携帯電話デビュー。 高校入学当初から、「そろそろ要る?」「うん、でも、まだいいよ。」と携帯無しで頑張ってきたオニイ。そろそろ部活の仲間との連絡や中学時代の友人たちとのメール交換に、欲しくなってきたらしい。 あれこれ、迷ってようやく手に入れた高校生必須アイテム。さっそく友人たちのアドレスを登録したり、着信音をあれこれ変えてみたりして楽しそう。 「さぁ、これで彼女にも心置きなくメールが出来るね?」とからかっていたら、諸事情によりオニイの携帯初メールは母のPCアドレスへのテストメール。 あらら、初メールが母親宛なんて、気の毒なことで・・・。
オニイ、高校で剣道部に入ってから、毎日お弁当のほかにあんぱんを一個持参する。 お昼にはがっつりお弁当を食べても、部活を終える頃には腹ペコでへろへろ。自転車をこぎながらあんぱんを食べて帰って来る。 「おにぎりとか、惣菜パンとかのほうがいいんじゃないの?」と訊いても、「稽古のあとは、とりあえず糖分が欲しいんだ。」 というので、来る日も来る日も私は買い物に行くたび、オニイのためにあんぱんを買っていた。
「かあさん、いつも買ってくれてるあんぱんって、いくらするの?」 と昨日オニイが訊いた。 「さあ、安売りのを買うことが多いけど、まあ、100円前後でしょうね。」 「んじゃね、ちょっと提案があるんだけど。」 いつも腹ペコだからあんぱんを持たせてもらってるのはとても助かる。でも最近は帰りが遅くて寒いから、あんぱんは冷たくてちょっときつい。 出来たらパン代を半分でもいいからお金で貰って、コンビニの暖かい肉まんを買って食べちゃいけないだろうか。 そういうことだった。
まあね、お腹もすくだろうしね、冷たい風の中自転車をすっ飛ばしていたらホカホカ湯気の上がるコンビニの肉まんの誘惑にはついついクラクラしちゃうだろう。仲間たちとのお付き合いもあるのかもしれないしね。 生真面目なオニイにも部活帰りの買い食いの楽しみを味わってもいいかなぁと思ってOKを出した。 ホントのことを言うと、買い物に行くたび、翌日のオニイのためにあんぱんを選ぶ習慣がなくなるのはちょっと寂しいような気もするのだけれど。
ここ2週、剣道の対外試合が続く。 試合前の猛特訓で帰宅がさらに遅い。学校での部活を終えた後、よその道場への出稽古なんかもあったりするらしい。 帰りが遅くなると、家族の夕食には間に合わない。みんなが食べ終わった食卓で一人分だけ暖めなおして食べる日が増えた。
今夜の夕飯は肉じゃが。 「オニイの分は取ってあるからね」と大皿盛を取り分けてみんなで食べた。 遅くに帰宅したオニイ、着替えもそこそこに一人で夕食をとったのだけれど、あとで流し台を見ると一人だけレトルトカレーを食べた形跡がある。どうやら肉じゃがには、箸をつけなかったらしい。 肉じゃががお気に召さなかったのか、ガツガツとカレーを食べたい気分だったのか。 どちらにしても遅れて帰ってきて、用意してある献立に手をつけないで、一人だけレトルトカレーを暖める所業にカチンと来た。 よってお説教。 「何故みんなが食べたおんなじものを食べないで、自分だけちがうものを食べるの? 携帯電話も持って、帰りが遅くなっても少々寄り道をしても叱られなくなって、自由が認められてるような気がしてるかもしれないけれど、まだまだ君は子どもよ。うちの家族は、みんな一緒におんなじものを食べるの。それが我が家のルール。 自分の好きな時間に、自分の食べたいものを勝手に食べる自由なんて、君には十年早いよ。」
子どもたちが小さい頃から、夕食はたいてい家族全員がそろって一緒。そんなささやかなルールも、子どもたちが大きくなってそれぞれの世界が広がれば帰宅時間も揃わないし、一緒に食卓を囲める日も限られてくる。 遅ればせながら我が家にもそういう時期がきているのだなぁとそろそろ覚悟はしていたのだけれど。 家族が一人一人、好きな時間に自分の食べたいものを勝手に食べて平気でいる。自由で気楽で快適なようだけど、そんなのは家族じゃない。
朝、送り出したら、遅くまで帰ってこない。 ヘロヘロにくたびれて帰ってきて、ガツガツと夕飯を食べて、知らぬ間に寝てしまう。 そんな息子と母をつなぐのは、毎日買うあんぱん。 「オニイが好きだよね」とついつい買ってしまうスナック菓子。 「少しでも暖かいうちに」と用意する晩御飯。 「お袋、胃袋、堪忍袋」というのは結婚式の定番スピーチの題材だけれど、結局最後まで家族をつなぐのは胃袋のつながりなのだなぁと思う今日この頃。 だから、「あんぱんはもういいよ」といわれると寂しい。 「肉じゃがより、レトルトカレー」といわれるとカチンと来る。 ただただ、巣立ちの日の近い息子の成長が寂しい母の感傷に過ぎないのだけど。
と、ここまで書いたところでオニイからのメール、受信。 「今日は早く帰る おそらく普通に飯が食えそう」
で、すぐに返信。 「了解、鍋にしようか?」 ああ、あほらし。馬鹿な母親。
BBS
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