月の輪通信 日々の想い
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先日、食品庫の整理をしていたら、中から何故かラップの芯が一本。 なんだか場所ふさぎだわとゴミ箱に棄てておいたら、しばらくしてアプコが「これ、貰っていい?」と嬉しそうに拾ってきた。 「いいよ、何に使うの?」と訊くと、「内緒、内緒。」と逃げていった。
昨日、夜剣道から帰ってきたら、居間のコタツの上に3センチくらいの輪切りになったラップの芯がコロコロしてる。 「はぁ、何か作り始めたな。」 コロコロのわっかの切り口の片方は、丸く切ったコピー用紙で丁寧に蓋がされていて、そのうち一個には短く切った割り箸が貼り付けられている。 ちょうど短くなったアイスキャンデーの有様。
「これ、なに?」 子どもたちが寝間へ上がったあと、父さんに訊いて見る。 「なんだと思う?」 硬いラップの芯は子どもの力ではどうにも切れなかったので、父さんが小型ののこぎりで輪切りにしてやったのだという。 「これ、ヒント。」 と父さんが紙くずの下から引っ張り出したのは、ちょうど子供用スリッパの底のような形に切ったボール紙。 ご丁寧に2枚張り合わせて補強したのが二つ。これはアプコが自分でギコギコ鋏で切ったようだ。
「もしかして、ローラースケート?」 「当たり!」 短い割り箸の両端に輪切りにしたラップの芯を貼り付けて車輪にし、それを二組づつ貼り付ければ確かにローラースケートっぽい形は出来る。 「でも、それじゃ、車輪は動かないでしょ?」 「うん、でも本人はまだ、そこんとこ、気がついてない。」 「車軸だって割り箸だし、第一、車軸を支えてるホイルキャップは コピー用紙よ。」 「ま、すぐ、壊れるだろうね。」 二人でお腹を抱えて笑う。
それにしても、ずいぶん細かい作業がしてあるぞ。 コピー用紙のホイルキャップは、丁寧に切り口の形を鉛筆で写し取ってから切り取ってあるし、糊代には細かい切込みを入れてある。 底板部分は、自分のスリッパの型を取って作ったのか。短く切ったセロテープで丁寧に2枚のボール紙を張り合わせてある。 こんな細かい作業が一人でちゃんとできるようになったんだなぁ。 一本のラップの芯から、びゅんびゅん疾走する手作りローラースケートをイメージして、そそくさと鋏を動かすアプコの愉快さ。 まだまだ、楽しい笑いを提供してくれそうだなぁ。
で、今朝のアプコ。 今度はコピー用紙を細く切って、また何か熱心に拵えている。 丸めた支柱、蛇腹に折った階段、なだらかなスロープ。台紙になる用紙は黄緑の色鉛筆で一面塗りつぶされている。 「なんだと思う?」 「滑り台?」 「当たり!」 コピー用紙で作ったものだから、強度には問題はありそうだけれど、その形は完全に公園にある滑り台そのもの。 なかなかの出来。
「で、さあ。昨日作ってたローラースケートはどうなったの?」 「ああ、あれ?もう作るのやめた。」 さては、根本的な問題点に気づいたらしい。 ダメだと思ったらさっさと放り出して、新しい課題に熱中するのもアプコの性格だ。 「あ、いいもの作れそう!」とひらめいて、あれこれ工夫して鋏を動かしているその過程こそが楽しくて、成果の良し悪しはそれほど問題ではないのだろう。 その屈託のなさがまだまだかわいい。
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