月の輪通信 日々の想い
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朝、あわただしく子どもたちを起こしながら、目玉焼きを作る。 熱したフライパンにパカン、パカンと卵を割っていたら、最後の一個をコンロのかどにカツンとやったところで、殻がぐしゃっとつぶれて中身が床に流れ落ちた。 ありゃ、やっちゃった。 ぶつぶついいながら、慌てて拭き掃除。 ああ、もったいない。
なんだかとても殻の脆い卵だった。 「500円以上お買い上げの方、お一人様1パック限り」の但し書きつきの大安売りの卵だったせいかしら。 いつも生協からくる卵はとても殻が固くて、黄身の色も濃い。 それを割るのと同じ力加減でカツンとやったものだから、脆い卵はフライパンに載る前に床に流れて自滅してしまったのだろう。
見た目はどれもおんなじ卵。 大きさの大小や形の違いはあるけれど、卵は卵だから、ついつい同じ力加減でカツンとやって、1年に1回か2回、今日のような失敗をする。 で、毎度毎度、同じようにびっくり仰天する。 見た目は同じ卵だけれど、乱暴にカツンとやってはいけない卵も、中にはあるという事だ。
アプコ、このところまた、算数プリントに四苦八苦してる。 繰り上がりくり下がりの足し算引き算。 掛け算の九九。 学校でやったプリントはすぐに採点され、間違った数が赤ペンで「−3」とか「−12」とか書かれて返されてくる。で、間違いの多い子は、新たに同じプリントがやり直しプリントとして宿題になる。 ここ最近、アプコはまたやり直しプリントの常連さん。
オニイやアユコやゲンの時にも、こんなに算数で苦労したことってあったっけかなぁ。 バタバタと忙しい時期だったから、しっかり宿題を見てやった記憶もないし、だからといって「今日もやり直しプリントもらっちゃったぁ。」なんてこともなかったはず。 放って置いても学校の授業の内容くらいはそこそこ出来ていたように思うんだけどなぁ。
アプコも決して授業の内容を理解していないわけではない。 50問の引き算の問題を5個ずつ10回に分けて、少しづつ丁寧にやらせてみると、10回全部満点が取れるのだ。 多分50問いっぺんに与えられると、問題の多さに舞い上がってしまって一つ一つを丁寧に見直すことが出来なくて、誤答が増えるのだろう。 大雑把でせっかちなのは母譲り。 許せ、アプコ。
アプコもだんだん、嫌気が差しちゃって、ふと気がつくとやり直しプリントを貰ってくるたびに、 「おかあさん、ごめんなさい」と申し訳なさそうに目を伏せて謝るようになっていた。 たかが算数が出来なかったくらいで、たった8歳の子が「ごめんなさい」なんていわなくていいのに。 九九の答えを間違えるたびに、しょげてうなだれるアプコはほんとに小さい。昨日はとうとう、ポロリと涙までこぼれた。 お調子者アプコの突然の涙に、ちょっとびっくりした。 まだまだこの子はお絵かきと鼻歌とお料理ごっこの好きなチビちゃんだったのだなぁと改めて思う。
4人の子どもたちは皆それぞれに違う個性を持った一人一人の人格。 納豆が大好きな子もいれば、あのネバネバを見るのもいやという子もいる。 朝、すこぶる寝起きのいい子もいれば、いつまでたっても布団から出られなくて泣きべそまで掻く子もいる。 片付け上手で几帳面な子もいれば、どんなに散らかっていても平気でその上に寝そべる子もいる。 同じ父さん母さんから生まれた4つの命。 見た目はそれぞれ似ているけれど、やっぱり違う命なのだ。 同じ力加減でカツンとやっても、平気な卵もあれば、フライパンの外で壊れてしまう脆い卵もある。 みんなおんなじ力加減ではダメなのだ。 そんなことを思う。
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