月の輪通信 日々の想い
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2006年11月23日(木) 何故言えぬ

早朝から、オニイ、剣道の昇段試験に出かけていった。
初段認定、3度目の正直。ようやく合格。
うれしそうな声で会場から電話で知らせてきた。
電話口のむこうで、にぎやかな友達の声。
「○○で〜す、今夜は鍋パーティーお願いしま〜す。」
「オニイくん、うかりましたよ〜ん。」
オニイの背中から、ふざけて大きな声でメッセージを送っているらしい。
その楽しげな様子がなんともよくて、いい仲間と剣道やってるんだなと知れてうれしくなった。



この間の中学の学級懇談のときなどに思ったこと。

女の子たちのスカートが短くて困ると先生に相談なさったAさん。
娘のAちゃんが制服のスカートをウエストのところで巻き上げて、ミニスカートにして登校していくのだという。Aさんが注意すると「みんなやってるもん」と口答えして、ぷいとふくれる。しつこく、叱ると「無理!」と無視して行ってしまう。
「本来、子どものスカート丈を管理するのは家庭のしごとだということはよくわかってるんです。
こんなことで先生方の手を煩わすのは申し訳ないとも思いますが、『学校ではみんなやってる』と言われるともうそれ以上は強く言えないんですよね。学校のほうでもっと厳しく言ってもらえないでしょうか」

「『みんなやってる』って言うのは子どもの常套句ですねぇ。
いや、うちの息子もね、『ゲーム機買ってよ。みんな持ってるでぇ』って言うんですよ。『誰と誰と誰じゃい!』と説教するんですが・・・」
とは担任のK先生の弁。
暗に、「中学生にもなって幼児と同じ言い草じゃないですか」と皮肉っておられたのかもしれないけれど、Aさんは最後まで「すみませんけど、学校でも厳しい指導を」と繰り返して訴えておられた。

夏休みに息子B君が髪を赤く染めたがったというBさん。
「夏休みの間だけだから、いいじゃん。始業式までには黒に戻すから。」
と何度もねだられたという。
友達同士で毛染め剤を買って染めあいっこするのだそうだ。
「いくら休み中でも絶対ダメ!」と叱っていたんだけれど、「おかあちゃんだって染めてるやん、何であかんの」といわれたという。
「それをいわれちゃぁ、なんにも言えなくなるわよねぇ。」
とBさんは笑って言う。
そういえば、懇談会に残るお母さんたちの多くは、ほとんど髪を染めている。白髪染めだかおしゃれ染めだかは知らないけれど。

AさんもBさんも決して子どものしつけに無関心なタイプの親ではない。
むしろ、学校での子どもの様子をよく把握しておきたいとPTA活動にも参加し、参観懇談でもよくお顔を見かける熱心なお母さんたちだ。
それにAちゃんB君だって特別問題があるって言うわけじゃない、普通の、ごくごく真面目なほうの子どもたちだ。
屁理屈や口答えはこの年齢の子どもたちならどこにでもあることなのかもしれない。

それにしても腑に落ちないのは、なぜAさん、Bさんが子どもたちに「ダメなものはダメ」と叱ることは出来ないのかということ。
「みんながやってても、うちはダメなの。」
「大人とこどもは立場が違うの。そんなに勝手なことがしたいなら、自分で稼ぐようになってからやりなさい。」
と何故いえない?
苦労して生んでやって、毎日ご飯を食べさせて、心配したりおだてたりしてここまで育ててやった子どもたちだ。
娘のミニスカートや息子の茶髪が許せないなら、「ダメったらダメ!」と叱ってもいいじゃないか。
AさんもBさんも「言えないわよねぇ。」と周りのお母さんたちに同意を求めるように笑っていたけど、そんな風に子どもの顔色をうかがって弱腰で叱るのが、本当に今の子育てのスタンダードになってしまっているんだろうか。
その上で、家庭で出来ない子育てを「学校で厳しく言ってもらわなければ」とお鉢を預けるのが当たり前になってきているとしたら、学校の先生方のご苦労はますます絶えないのだろうなぁとご同情申し上げる。

最近後を絶たないいじめや自殺。
何かというと頭を下げておられるのは学校の校長先生や教育委員会の偉い方。友達を自殺にまで追い込むいじめを行った加害者の子どもたちやその親たちが謝罪する姿が報道されることはない。
「いじめてはだめ」「いじめを見てみぬふりをするのもだめ。」「いじめられても死んではだめ」としっかり教えるのはまず家庭の責任。
いじめを見逃す学校教育のシステムにも問題はあるけれど、それがすべてではない。
「みんながやってるから」と大勢に流される子どもと、それを叱れないから「学校で厳しく指導して」と人任せにする保護者。
「ダメなものはダメ」と強く言える自信が家庭の中にもっと必要なのではないかと言う気がしている。
自戒をも込めて。


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