月の輪通信 日々の想い
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2006年11月13日(月) 手をつなごう

父さん、昨日から韓国出張。
四泊五日、帰宅は木曜日。
朝、子どもたちの目覚まし時計役を務めてくれる父さんがいないと、朝の準備や朝食がやけにあわただしい。
フライパンでお弁当のウインナーを炒めながら、「おおーい、おきろー!いそげー!」と雄叫びをあげる母。
参った。

今朝はことさら火の気が恋しい朝だった。
「コタツは、師走になってから」と厳しく片意地を張る私に、子どもたちのラブコールは頻繁になる。
「コタツがダメならストーブ出そうよ。そろそろ洗濯物も乾きにくくなってきたみたいだしさ。」
う〜ん、台所の大きなガスストーブ。
ホンワリ柔らかな暖かさと上に懸けたやかんの湯気の優しい潤い。
子どもたちが集まってきて、ホットミルクを沸かして・・・。
冬の台所の楽しみを思い出してほっとうれしくなる。
でも、まだまだ。
お楽しみは後に取っておかなくては。
あと少し、やせ我慢。

あわただしく子どもたちを送り出して、ふと点けたTVのワイドショーでの特集番組。
「もう一度手をつないで見ませんか。」
街頭で、結婚して年月を経た夫婦に「手をつないで歩きませんか」と提案して、テレながら手をつなぐ夫婦の姿を追う。
「恥ずかしいから、いや。」「何をいまさら」と照れて嫌がっていた夫婦が、一旦手をつないで見ると案外まんざらでもなくて、笑顔になっていくのが面白かった。
恋人同士や新婚の頃には何の気なしにつないでいた手。
そういえばつながなくなるなぁ。
出演者のひとりが、「手をつながなくなったのは、3人目の子どもが生まれて、夫婦のうちどちらかが両方の手を子どもに取られるようになってからかなぁ」と発言していたのが、「そうそう、そのとおり!」と納得がいって、可笑しい。
番組のなかで、どうやら独身らしい女子アナが「いいなぁ、繋げる手があるって、なんかいいなぁ」と漏らして、他の出演者に茶化されていた。
手をつないで二人で歩く。
そんなたわいもないことを、羨ましく眺める若い女子アナのため息はほほえましいけれど、そういう自分だってもう何年も父さんと手をつないで歩いたことはない。
それどころか、子どもたちが大きくなって一人で外を歩いても危なくなってからは、子どもたちとすら手をつなぐことは少なくなった。
手の中にすっぽり納まる小さな幼児の手、泥んこ遊びやクレヨンの匂いのする子どもの手、そしてがっちりと守られている気持ちになる父さんの手。
いつもすぐそこにあって、その気になればいつでも触れることのできる夫や子どもたちの手のぬくもりをもうずいぶん味わったことがないのに気がついた。
いつものように父さんが隣に座っていて、一緒にTVを見ていたら、きっとどちらからともなく「ちょっと手ぇ貸して」とその感触を確かめ合うんだろうなと思うと、父さんの数日の不在がちょっぴり寂しくなった。

夜、部活を終えて自転車を飛ばして帰ってきたオニイの頬はかすかに赤い。
これから寒くなると、行き帰りの自転車はきついだろうなぁ。
今朝オニイは初めて通学に手袋をしていった。
今年オニイのために少し早めに調達した手袋は、防水防寒特殊加工つきのちょっぴり高級品。
出がけに「かあさん、そろそろ手袋いるんだけど」といわれて、そら来た!とばかり渡したんだけど、意外とオニイの反応は薄くて、なぁんだとちょっとつまらない想いがしたのだけれど。

腹ペコで帰ってきたオニイに、夕飯の汁物を温めなおしていたら、オニイがお箸を取りにきて、ついでにちょこっとつぶやいていった。
「ああ、かあさん、あの手袋な、あったかいわ。」
そう、よかった。
手をつなぐぬくもりの代わりに手袋を渡した母の思いを、きっとオニイはわかってくれていたのだろう。


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