月の輪通信 日々の想い
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秋の3連休2日目。 オニイは早朝から剣道の試合。まだ暗いうちに車で駅へ送っていく。 「んじゃ、行ってくるわ、ありがと」と短く言って、後ろ手にひょいと手を上げるのは、父さんと同じ仕草。 いってらっしゃい。 爽やかに、負けてこい。
残りの3人を連れて、市の文化祭を見に行って、お昼ごはん食べて、その後父さんは立て続けに個展の打ち合わせや会合でおでかけ。 庭掃除をしたり、片付け物をしたり、冷凍庫の大整理したりしていたらもう夕方。 2件の駅への迎えが重なって、右往左往していたらあっという間に夜になってしまった。 あわただしく過ぎていった今日の一日。 ふと気がつくと今日は11月4日。 父さんと私の結婚記念日だった。
もう何年になるんだろう、父さんと一緒にすごすようになって。 結婚の翌年に生まれたオニイがもうすぐ16歳になるのだから、17年目? 「卒業してから○年」とか「仕事に就いてから○年」とか、自分に起きた事柄ではなく子どもたちの年齢や成長から、自分の歴史を数えるようになって久しい。 「父さんと出会ってから○年」という数え方を、もう一度思い出してみようかと思ったりする。
結婚式の朝は、今日みたいに爽やかな秋晴れだった。 家を出る時に、父が「帰ってきてもいいぞ」と言ったのを思い出す。 「嫁に出したからと言って、それで子育てが終わりになるわけじゃなし。」 親として、まだまだ娘の行く末の心配の種は尽きたわけではないと、言いたかったんだろうか。 あれから17年。 子どもたちが生まれ、大きくなって、私も家庭や地域でいろんな仕事や役割を果たすようになって、この場所にどっかと根っこをおろした。 もし私が「帰りたい」と言っても、父は「いいんだぞ」とは言わないだろう。 もう、私の場所はここなんだろうなぁ。 逃げ出す場所は、他にはないんだろう。
夕方、父さんとオニイを駅まで迎えに出て、薄暗闇を歩いてくる二人の姿が遠めには「父と子」には見えなかった。 学生服のオニイはぐいっと背が伸びてちょうど父さんとおんなじくらい。親子と言うより「二人の男の人」が歩いてくるなぁっていう感じで。 「かあさん、ハラヘッタァ。晩御飯なに?」 母を頭上から見下ろしてしゃべるようになったオニイの笑顔が、17年のごほうびということで。 今日も淡々と一日が過ぎた。
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