月の輪通信 日々の想い
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2006年09月18日(月) 乙女の気持ち

新学期疲れ、運動会練習疲れがついにアプコに来た。

ちょっと風邪気味かな・・・と思ったら、昨夜からの発熱。

幼稚園をお休みしてぐだぐだ過ごす。

ぽってりと熱を含んで、大仰にはぁはぁして「しんどい」を繰り返すアプコに、オニイが言った。

「かわれるものなら、かわってやりたい。」

ちょっと待て、それは普通、親のセリフじゃ。



うちには、もう一人、お疲れさんがいる。

運動会の応援団。組み体操の中の「太極拳」の指導係。「御神楽」の指導係。それに村の秋祭
りのお囃子。

一人でいくつも役職を抱え込んで、ひーひー言っているアユコ。

それでなくてもプレッシャーに弱く、ストレスがきわまると自家中毒の発作が始まるというのに、
この時期、アユコは意地のように次々と新しい事に挑戦している。

「だって、誰もやらないんだもん。」

きまじめなアユコは、誰も立候補しない役職を「しょうがないなぁ」と次々いただいてきてしまっ
たようだ。



「しんどいわぁ。明日学校行きたくない。」

体力的にもきつくなってきたか、家ではごろごろしていることが増えた。

「んじゃ、明日さぼっちゃえ。君がいなくても一日ぐらい何とかなるよ。」

と、私がけしかけても

「う〜ん、1.2時間目は○○があるし、中休みには××の打ち合わせがある。お昼休みには
□□の練習だから抜けられない。あ〜、ダメ。明日は休めない。」

自分が必要とされている項目はしっかり把握して、スケジュール管理しているアユコ。

偉いねぇ。

でもね、そんなに頑張り過ぎなくていいんだよ。



朝、通販で買ったアユコの下着が届いた。

初めてのブラジャー。

やせっぽちのアユコの胸はまだまだぺったんこで、「寄せて上げる」ものもないんだけれど、そ
れでも、素肌に直接着たTシャツの胸に、微妙な尖りが見えるような見えないような。

クラスの女の子達にははやナイスバディの片鱗が見えてきている子もいて、「そろそろ、ブラの
着用を・・・」とのお達しがあった。

「まだまだ要らないとは思うんだけどね。」

と言いつつ、一番小さいサイズのスポーツブラの幼さがかわいくて、親の方が大乗り気で選ん
で買った初ブラジャー。

薄いパットを外すと、短めのタンクトップと変わらぬ感じで、さほど違和感もなさそうだ。

「アユコ、アユコ!いいもの買ったよ。みてごらん!」

帰って来たばかりのアユコにさっそくみせる。

「かわいいよ、ちょっと着けてみてよ。」

「えーっ!」

恥ずかしがるアユコ、かわいい!初々しい少女の恥じらい・・・。



・・・と、思ったら、ぽろぽろとアユコの目から大粒の涙。

「あらら、どしたの。泣かなくてもいいじゃない。別にイヤだったら着けなくていいよ。気に入らな
かった?」

激しくアタマを振るアユコ。

「まだ、すぐに着けなくてもいいのよ。イヤなら、引き出しに仕舞っておいで。」

ますますこぼれ落ちるなみだ、なみだ。

ありゃりゃ、こんな筈じゃなかったのに。



そういえば、私自身の初ブラジャー。いくつの時だったっけか。

アユコと違い、ぽっちゃりタイプで初潮も早かったから、意外と早い年だった気もする。

ブラウスの背中に、ブラのラインがでるのが恥ずかしいような得意なような・・・。

甘ずっぱい匂いのするはるか昔の思春期の思い出。

白いブラに小さく縫い取られた小花の刺繍が嬉しかったのを思い出す。



連日のお忙しと責任感で、いっぱいいっぱの力を振り絞っているアユコ。

たぶんその緊張の糸を、オトナの匂いのする新しいブラジャーが、ぷつんと切ってしまったのだ
ろう。

全く間の悪い事であった。

アユコが、これから一生、おそらくおばあさんになるまで着け続けるであろうオンナだけの下
着。

その初めての出会いを、楽しい嬉しいものにしてやれなかった自分のとんまに、腹が立つ。

ごめんね、アユコ。

乙女心の微妙な機微を、母はすっかり忘れていたよ。(なにせ、太古の昔のことゆえ・・・)



新品ブラはやっぱりもう少し大事に仕舞っておこう。

アユコが、晴れ晴れとオトナになる自分を受け入れられる日まで・・・。

もうすぐそこに来ている日のために・・・。




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