月の輪通信 日々の想い
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三連休初日。 といっても、父さんは朝から普通に仕事。 オニイは朝から部活に、私は市のPTAの広報紙講習会に。 ゲンは朝から友達と川へ魚とりに行く約束をしている。 お寝坊アユコとアプコに、洗濯干しと昼ごはんの段取りを言い置いて出かけた。
ゲンが今日、遊ぶ約束をしているのはクラスメートのOくん。最近一番気の合う友達らしい。 家でザリガニをたくさん飼っているとかで生餌用の小魚を取りに行く約束をしたのだと言う。 2,3日前にも放課後、二人して裏の川にざぶざぶ入って、小さな小魚を何匹か掬ってきていた。 ガラガラとバケツをぶら下げて、一人は長靴ガポガポ、一人はゴム草履ペタラペタラと引きずって意気揚々と川から帰ってくる様子は、まさに昭和の悪たれ坊主。 なんだかとってもいい感じなのだ。
Oくんのおうちは実は転勤族らしい。 何年か前、隣県から転校してきて、友達になったが、また最近、お父さんの転勤の話が持ち上がっているらしい。ここ一週間ほどの間に引越しするか否かが決まるのだと言う。 ゲンはその話をO君から聞いてから、本人以上にその結果を気にしている。 せっかく出来た川遊びの相棒を失いたくない気持ちなのだろう。 そういえばゲンはまだ、転校や引越しでの仲良しとのお別れを経験したことがない。 惜しむような気持ちで連日Oくんと川遊びに出かけたいゲンの想いがつたわってくる。
「ほら、こうすれば、自転車でもちゃんと持ってかえれるよ」 ゲンは掬った魚をお味噌の入っていたポリ容器に移し、ラップと輪ゴムでしっかり止めて、Oくんの自転車の前カゴに乗せた。 「もっと大きいのがいっぱいとれればよかったんだけど・・・」 そのもどかしさは、そのまま、O君への友情の想いをしっかり伝えきれない自分へのもどかしさ。 その不器用な表現が、いかにも今のゲンらしくて、なんとなく胸が熱くなった。
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