月の輪通信 日々の想い
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アユコ、誕生日。 背が伸びた。
近頃、アユコは感情の起伏が激しい。 意味もなくケラケラ笑い、アプコと手をとりあって踊り狂っていたかと思うと、急に不機嫌になって部屋のドアに当り散らし、そのくせ一人で隠れて涙ぐんでいたりする。 心と体の変化のスピードが速すぎて、自分でももてあましている感じ。
近頃、アユコは本の虫。 いつも図書館で借りてきた分厚い本を読んでいて、大きな声でアユコを呼んでも返事ができないくらい熱中している。 アユコの頭の中では、竜や妖魔の物語と明日の水泳の授業の憂鬱がぐちゃぐちゃ混じっていつもぐるぐるめぐっている。
近頃、アユコは大人を見てる。 母が洗ったお皿の小さな洗い残しをアユコは見逃さない。 疲れて帰った父さんのわずかな不機嫌の影を見逃さない。 大人の小さなずるさや賢さを目ざとく見つけて評価する。 アユコの評価基準はきわめて厳しい。
ケーキ屋さんで家族の人数分のカットケーキを選んだ。 フルーツやチョコレートを飾った色とりどりのケーキの中で、アユコが選んだのは地味な色合いのチョコレートのシフォンケーキ。 「申し訳ないけど、お誕生日用のろうそくもつけてね。14歳なんだけど・・・」といったら、そばからアユコが 「えーっ、『ケーキふうっ』はもういいよ。」 と照れた。 「何言ってるの、そのためのケーキじゃないの」とろうそくをもらった。
大きなろうそくが一本、小さなろうそくが4本。 14才。 大人半分、子ども半分。 14才というのはそういう年齢。
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