月の輪通信 日々の想い
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今日は七夕。 私たちの住む町は「七夕ゆかりの地」が自慢の町。古くからの地名や遺跡にも「星田」「天の川」「織物神社」など星や七夕にちなんだものがたくさん残っている。 地域や学校など七夕にちなんだイベントがあちこちで行われる。いろんなところで短冊が配られ、子どもたちはたくさん願い事を書いて、あちこちの笹飾りにつけさせてもらう。 去年からは小学校のすぐ近くで、市の主催の大きな七夕イベントが開催されるようになった。模擬店が出て、近くの天の川沿いに手作りの竹の灯篭がずらりと並んで点灯される。
アプコはずっと前からこの日を楽しみにしてきた。 学校では、七夕集会が行われて各学年が日頃練習してきた合唱や合奏を披露する。 夜はお祭りに行って、模擬店のかき氷が食べられる。 折り紙や金モールを惜しげもなくもらって、七夕飾りや短冊をこしらえるのも楽しくてたまらない。 アプコにとって七夕は、なくてはならない夏の一大イベント。 「早く七夕にならないかなぁ。」と指折り数えてその日を待つ。
一方、母にとっては今年の七夕は大忙しの殺人的スケジュールの一日だった。 朝から小学校の七夕集会参観。 午後からはオニイの学校の保護者懇談会。 夜はゲンの剣道送迎。 これにゴミ出しだの生協の荷受けだの、些細だけれど抜けられない雑事もあれこれ目白押し。 おまけに夜のお祭りに行かせるためには、行き帰りの送迎も必要だ。 頼みの父さんは個展中で協力は望めない。 お祭りも剣道も行かせてやりたいし、七夕集会も懇談会も出席しておきたい。 どうする、どうする。
昨日一日、この日の時間のやりくりに四苦八苦していた。 一日のスケジュールを紙に書き出して、誰かに代わってもらえるところは代わりの人を手配して、練りに練ったこの日の行動スケジュール。 分刻みの綿密な予定表を手に考えた。 「いっそ、ゲンが『剣道休んでお祭りに行きたい』と言い出してくれたらなぁ」 「いっそ大雨が降って、七夕祭りが明日に順延になったら助かるのになぁ。」 天気予報によると7日午後からの降水確率は50パーセント。 これもまた微妙なところ。
ふと見るとさっきまで折り紙で七夕飾りを作っていたアプコが、ティッシュペーパーを丸めてなにやら熱心に拵えていた。 「それなぁに」ときくと、「てるてる坊主。明日お天気になりますようにって。」という。 「お母さんは雨が降ったほうがいいかもなぁ。お祭りが8日になったら、みんなでゆっくり見にいけるもん」 といじわるをいったら、アプコ、急に生真面目な顔になって、こんな答えが返ってきた。 「だって、織姫と彦星は一年に一回しか会えないんでしょ? 雨が降ったら会えなくなっちゃうからかわいそう。」
そうでした、そうでした。 七夕は織姫と彦星の遠距離恋愛がたった一日かなえられる大切な日。 お祭りも七夕集会も、本来はそのおまけだったね。 忙しい忙しいにかまけて、肝心のことを忘れてました。 アプコにとっての七夕は、きらきらの笹飾りや模擬店のかき氷の楽しみだけじゃなかったんだね。 そうでした、そうでした。 母、猛烈に反省。
今日、アプコは夕方までKちゃん母にお祭りに連れて行ってもらって、夜はアユねえといっしょに模擬店でヨーヨーつりや金魚すくいをした。 夜道のお迎えは、オニイが買って出てくれた。 ゲンにいちゃんと一緒にお風呂に入って、あて物でもらった水鉄砲で遊んでもらった。 母が忙しく走り回っていても、アプコはオニイオネエに守られて七夕のお祭りを存分に楽しんでくることができる。 楽しいはずだね、アプコの七夕祭り。
心配したお天気もてるてる坊主の効果てきめん。 笹飾りも濡れずにすんだ。 空の天の川では、年に一度のランデヴーが果たされただろうか。
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