月の輪通信 日々の想い
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2006年06月23日(金)

「額屋、行くけど、乗ってく?」
と父さんが帰ってきて言う。
展示会に出す陶額用の額縁の注文のために、いつもの額屋さんへ行くのだと言う。最近父さんの展示会では小型の陶額がよく出るようになって、そのたびにこの額屋さんで特注の額縁を注文する。額屋のOさんは父さんの大学の後輩で、締め切り間際の滑り込みの注文にも陶額仕様の無理なカッティングにも丁寧に対応してくださって、ありがたい。
金曜日がそのOさんの出勤日ということで、展示会前の金曜日にはなんとなく「額屋ドライブ」の機会が増えるのだ。

格別買い物があるわけではないけれど、「うんうん、乗ってく!」と家事をいい加減に切り上げて父さんの車に便乗する。
個展前で徹夜続きの父さんの運転の見張り番を口実に、気分転換がてらの小ドライブ。
必ず持って出るのは父さん用の買い置きの缶コーヒー。

父さんが額屋で打ち合わせをする間、私は近くのスーパーに下ろしてもらって買い物。
普段あまり立ち寄ることのないスーパーの棚に並んだ食品は、見慣れた商品でもなんとなくものめずらしく感じたりして、日頃買うことのないスモークサーモンだとか、紫玉ねぎだとか妙な物ばかり脈絡もなく籠に入れているのに気がついて一人で苦笑する。
大盛りキュウリと青ねぎを買い足して、店を出たところでふと目に付いたのは急な雨に備えて売られているカラフルな雨傘。
安売りのペットボトル飲料や缶詰の棚の間にこそっと置かれた傘のなかには、婦人用の傘に混じって子供用の小さいサイズのビニール傘も並んでいる。ちょうどアプコが新しい傘が欲しいと言っていたのを思い出して、白地に赤やピンクのさくらんぼ模様の傘を選んだ。
さっき通ったばかりのレジに支払いに行くと、レジのおばさんが「まぁ、かわいい傘!」とにっこり笑った。
「いいわねぇ、うちは女の子がいないからこういうものを買う楽しみはなかったわ。」
「そうねぇ、男の子はしょっちゅう傘壊してくるけど、買うのは色気もそっけもない傘だものねぇ。」
とこちらも笑って応える。
ほんとにそうだなぁ。
こういうかわいいものを気まぐれに選ぶ楽しみ。
娘あってこその楽しさだったなぁと改めて思う。

アプコが今使っている傘はアユコのお古の赤いタータンチェックの傘。
アユコがとても気に入って大事に使っていた傘は、2代目のアプコに引き継がれてもまだまだきれいでどこも壊れていない。
「アユ姉ちゃんの傘」を大事に使っていたアプコも、そろそろ自分好みの新しい傘が欲しくなって来たらしい。
さくらんぼ模様のパステルカラーの傘はまさにアプコ好みの愛らしさ。きっと喜んで、明日の朝の雨を楽しみに待つことだろう。
そういえば、いつもお下がりのアプコにとっては、この傘は初めて自分用に買い与えられる傘。
気に入ってくれるといいなぁ。


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