月の輪通信 日々の想い
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夜剣道。 ゲンを道場へ送り届け、指導の先生が来られたのを見届けてからいつものとおりスーパーへ。閉店前の特売品を物色しながら、土日の食材をあれこれ買い込む。 行きつけの肉屋のおばちゃんが自分のうちの夕食の買い物をしているのに遭遇。箱いっぱいの山椒の実を買うか買うまいか迷っていたようなので声をかけたら、おばちゃんは笑って山椒の実の調理方法を教えてくれた。 「あんたたち若い人らには、それほど美味しいもんじゃないかも知れんけどね。」 確かに、箱一杯分煮て食べたいほどではないけれど・・・。 ふとおばちゃんのかごの中を見ると、焼き魚や練り物など、半額シールのついた特売品が数点。あ、やっぱりお肉は買わないのねと納得。可笑しかった。
最後にパンを買って・・・とうろうろしていたら、正面からどこかで見覚えのある男の子がずんずん近づいてくる。ずいぶんくたびれた歩き方だなと思ったら、オニイだった。部活で帰りが遅くなったけど連絡できなかったのでもしかしたらここに母さんが来てるかと思って立ち寄ったとのこと。
嘘つけ! このスーパー、君の通学路からはずいぶん外れているじゃないか。 遅くなったと思ったら、回り道なんてせずにさっさと家へ直行すればいいのに・・・ さては、寄り道してジュースの一本でもせしめようという魂胆か・・・。
次々問い詰めたら、あっという間にオニイの返答はしどろもどろになった。 「や、違うっすよ。」 「そんなこと考えてないっす。」 「はい、わかってます。・・・でも、あの、今日、財布忘れてきちゃったンすよ。出来たらちょっと小銭を貸してもらえると嬉しいンすけど・・・。」 ははは、やっぱり目的はそこか。 馬鹿だな。 変な言い訳したから、ジュースは無し。 お金も貸さないからさっさと家まで走って帰りな。 残念でした。
片道9キロの起伏の多い通学路。 厳しい部活の練習を終え、腹ペコでこぐ自転車のペダルは重かろう。 毎日いっぱいいっぱいの体力で通学していくオニイを、心配しながらも「頑張っているなぁ」と見ていたけれど、意外と寄り道する余裕も出てきているんだなぁ。 自転車で遠出をする機会も増えて、彼なりの寄り道コースもブレイクポイントもいろいろ開発し始めているのだろう。 しゃぁないなぁ。 高校生だモンねぇ。
ところでスーパーの食品売り場で立ち話をしたオニイ。 最初から最後まで、変なニュアンスの敬語で喋っていたことに気がついた。 多分、部活で先輩たちに話しかけるときの体育会系の敬語なのだろう。 学校でもない、家でもない。中間地点のスーパーで母と話すとき、今さっきまで先輩たちに使っていた独特の敬語で喋ってしまうオニイの狼狽が楽しい。 今まで聞いた事のないオニイの体育会系敬語。 母の知らない世界、母の知らない人間関係がどんどん広がっているのだろうなぁ。
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