月の輪通信 日々の想い
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2006年04月26日(水) 女の子の友情

駅前の八重桜が昨夜の風でずいぶん散った。
ぽたっと花房ごと落ちてきた花弁をアプコがうれしそうに拾ってくる。
たくさん拾い集めたからといって、はかない花びらはすぐに汚くなってしまうし、せいぜいおままごとの材料になるくらいのものだけれど、女の子たちはたいがいうれしそうに花房を拾う。
きれいなものを自分の手の中に収める。
それだけの一瞬のうれしさのためなんだろうなぁ。

帰宅したアユコが一人でべそべそ泣いていた。
「どうしたの。今日は合唱部のスプリングコンサート、行ってくるんじゃなかったの」
と聞くと、急に声を出して泣き出した。

アユコはいつも友達のMちゃんと一緒に下校する。けれども今日は親友のAちゃんの合唱部のコンサートがあるので、アユコはそちらに参加するつもりだった。
ところがMちゃんはコンサートには行かず、アユコと一緒に帰りたいという。アユコはこれを断りきれず、結局コンサートをあきらめてMちゃんといっしょに帰ってきた。
帰ってはきたものの、「必ず見に行くよ」と約束していたAちゃんには申し訳が立たず、コンサートにいけなかったことも悲しくなってきた。そういうことらしい。

実はMちゃん、最近アユコが用事で一緒に帰れなかった日に同級生の男の子から何か嫌がらせをされたらしい。そこでとても怖い思いをしたので一人では帰りたがらないのだという。
事件の問題自体は先生も間に入って解決済みだというが、アユコは自分がたまたま一緒に帰れなかった日にMちゃんが嫌な思いをしたので、自分にも責任の一端があるように思い込んでしまっているらしい。だから「一人では帰りたくない」というMちゃんをむげに一人で帰すことが出来なかったのだろう。

ばかだなぁ。
Mちゃんの事件は、アユコが責任を感じなければならない事ではないし、毎日毎日Mちゃんと一緒に下校しなければならない義務もない。
用事のあるときは「ゴメンね、今日は駄目。」と言えばいいことじゃないか。それでもMちゃんが心細いというのなら、Mちゃんはほかの子と一緒に帰ればいいし、アユコといっしょにコンサートに参加して帰ってもいいはずだ。
大人はそんなふうに思うのだけれど、そしてアユコも頭の中ではそのことはよく分かっているからこそ「今日は一緒に帰れない」の一言がいえなかったのだろう。アユコの涙は多分優柔不断な自分自身への悔し涙だったのだろう。

あっさりきっぱりの男の子たちの友情とは違って、この年頃の女の子の友情はくねくねと入り組んで複雑で分かりにくい。
とっても仲良しの友達にも、自分が本当にやりたいことや嫌だなと思っていることを伝えられなかったり、相手の気に触るようなことは極力話題にしないように気を使ったり。
以前、ノートの貸し借りのことで感じたように、お互いの本音には触れないで表面上の仲良しを保つことにばかり心を砕いている感じがする。摩擦を嫌う現代っ子の生ぬるい友情のもどかしさが傍らで見ている母には苦しい。
「いやなことはいや、駄目なときは駄目って、はっきり言える友達でなくていいの?自分の本音は言わないで、表だけ仲良しでそれでいいの?」
何度も何度も問い返したい、そんな想いをぐっとこらえる。

「わかってるんよ。判ってるんだけど・・・」
と涙をぬぐうアユコ。きっと彼女なりの複雑な想いが色々とあるのだろう。
そんなふうに躓いたり悩んだりして学んでいくことだからね。きっと今度はもっと上手に対処できるだろう。
「とりあえずAちゃんにコンサートへいけなかったこと、謝っとくよ」
そうそう、まずはそこからはじめよう。
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