月の輪通信 日々の想い
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2006年04月20日(木) 第2弁当

お昼前、父さんと買い物に出かけた帰り道。
車窓からぼんやり外を眺めていたら、駅前の道端で一人のハイカーらしいおじさんが立っていた。民家の庭からあふれるように咲く八重桜を見上げながら、おもむろにコンビニ袋からあんぱんを取り出し、ばりっと袋を破ってムシャムシャ食べ始めた。
「わ、なんか、あのおじさんのあんぱん、おいしそう!
平日のこんな時間にあんぱんかじって、花見しながらぶらぶら歩くのって、なんかとってもいいなぁ」
と私が言ったら、父さんもちょうどおんなじことを考えていたらしくって、「気が合うねぇ」とケラケラ笑う。
もうちょっと余裕が出来たら、いつか行こうね、あんぱん持ってお花見。
大忙しでバタバタ走り回っているうちに、今年もソメイヨシノも八重桜も花の盛りを見逃してしまったけれど。

高校で剣道部に入ったオニイ。放課後の部活に加えて片道8キロの自転車通学で帰宅はいつも7時過ぎ。だらだら続く長い上り坂を上りきって、よれよれのヘロヘロで帰ってくる。
「腹減った〜。くたくただぁ。」
この春オニイのために買ったお弁当箱は結構大きめサイズ。
ご飯もおかずも気合を入れてぎゅうぎゅう詰めるのだけれど、それでも下校時間まではもたないらしい。部活の初日には、あまりの空腹に途中で2回も寄り道をして「うまい棒」と飴玉一個を買い食いして、エネルギー補給してようやく家までたどり着いた。
「どうする?お弁当、もっとたくさん入れようか?それともおにぎりでも別に持っていく?」と訊くと、とりあえず「糖分」が欲しいのだと言う。
それまで、「甘いおやつはいらない、パンも惣菜パン系のほうが欲しいな。」といっていたオニイなのに、あっと言うまにおやつの嗜好も変わってしまったらしい。
翌日からオニイは、いつもの弁当のほかに、袋入りのあんぱんと大玉の飴玉をカバンに詰め込んで登校していくようになった。

厳しい稽古を終えて、腹ペコでムシャムシャ食べるあんぱんはさぞかし甘いことだろう。
夫婦でお花見がてらのあんぱんはこの先食べる機会もあるだろうけれど、若い食欲で頬張るあんぱんの味はもう味わうことはないのだろう。
そう思うと、ヘロヘロのよれよれで自転車をこぐオニイの若さが、たまらなくいとおしく感じられたりもする。
今日もあんぱんを買う。


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