月の輪通信 日々の想い
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2006年04月01日(土) 電話で最敬礼

4月になった。
朝、雨戸を開けたら、川向こうの咲き始めたばかりの山桜にちらほらと雪が舞っていた。
なんだか季節がちぐはぐだけれど、きれいだなぁ。

高校生になっても、剣道を続けるつもりらしオニイ。
愛用の剣道着がすっかり小さくなったので、実家においてある叔父さんの高校時代の剣道着を譲り受けることになった。
その了承を得るために、東京の叔父さんに電話をかける。
普段、改まった電話をかける経験の少ないオニイ、ピリピリ緊張して受話器を握りしめた。

出勤前のこの時間だったら・・・と教えられた時間に電話したら、すでに叔父さんは家を出たあとだという。緊張の糸が切れてますますしどろもどろになって、「どうしよう?」と困り顔。
「また後で電話していいですか」とか、「伝言をおねがいします」とか、適当な答えが思いつかなくてオロオロしていたら、叔母さんが気を利かせて叔父さんの携帯の番号を教えてくれた。
「ダメダメだなぁ、今の電話。高校生の電話とはいえないなぁ。今度はもうちょっと言いたいことを整理してから掛けなさいよ」
母にダメ出しされて、しばらく考え込んでいたオニイ、「今は出勤の途中かなあ。今、携帯に掛けてもいいかなぁ。」とあれこれ悩みながら再び電話をかける。

「・・・・はい、・・・はい・・・。
それで、あの・・加古川にある叔父さんの剣道着、使わせていただきたいと・・・。
・・・はい、・・・はい。あ、ありがとうございます!うれしいです!
はい・・・・ありがとうございます!」
受話器を握り締めて直立の姿勢になり、何度も何度も深々とお辞儀をしながら返事をするオニイ。
あはは、それ、電話だよ。お辞儀しても見えないよ。
そういいながら、最敬礼でお礼を言うオニイの生真面目が楽しい。

オニイが今着ている剣道着は、同じ道場の大先輩から譲り受けた洗いざらしの中古品。新品も欲しいけれど、強い先輩からのお下がりの剣道着や尊敬する先生からいただいた面タオルなどをことさらに有難がって、ここ一番の時には必ず元を担いで身に着けようとする。
オニイにとっては、東京の叔父さんも剣道の大先輩。その剣道着を譲り受けられることになって、思わず言葉遣いまで道場モードになってしまうのが可笑しい。
高校生になって、今の道場をやめ、学校の剣道部に入って続けようかと思案中のオニイ。中学時代、運動部の経験もなくていきなり高校の剣道部が着いていけるのかどうか、はなはだ不安に思うのだけれど、「新しいことを始めたい!」と背伸びをするオニイの心意気が感じられる。
最敬礼でいただいた剣道着が、ヘナチョコ剣士のオニイに力を与えてくれますように。


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