月の輪通信 日々の想い
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アプコとアユコ、朝から二人で加古川のおじいちゃんおばあちゃんのところへ出かけていった。一つ、お泊りして、「イカナゴの釘煮」の作り方を習ってくるのだと言う。 実家のあたりではこの季節、あちらこちらの家の台所から甘辛いお醤油の匂いが漂ってくる。明石の漁港から昼網で揚がった小さなイカナゴを買い込んできて、大きなお鍋で釘煮を作る。釘煮の煮方にはその家、その家の独特のやり方があって、出来上がった釘煮は宅配の荷物にして遠くの親類や知り合いに送ったり、ご近所で互いに配りあったりして春の味を楽しむ。 本当なら、母の釘煮を受け継ぐのは娘である私なのだけれど、我が家ではアユコが、そして弟嫁のTちゃんが、この季節に実家を訪れて母と一緒にイカナゴを炊く。 母の懐かしい味を、アユコや若いTちゃんが学ぶ。 いいなぁと思う。
昔は流通の問題もあってか傷み易い生のイカナゴは我が家の近所ではなかなか手に入らなかったが、ここ数年、この季節になると近くのスーパーでも生のイカナゴが出回るようになった。 その気になれば我が家でも、釘煮を炊くことは可能になったのだけれど、ずぼらな娘は相変わらず母の煮てくれる釘煮を楽しみに待つ。 毎年母からもたらされる春の便り。 その暖かさに甘えたくて。
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