月の輪通信 日々の想い
目次|過去|未来
オニイ、公立高校の合格発表の日。 「発表は一人で見に行く。付き添いは勘弁して」と言い張るオニイを駅まで送る。車中、くだらないダジャレを連発してオニイの不安そうな顔を紛らわそうと試みてはみたものの、不機嫌な仏頂面をますます険しくしてばかり。駅で車を降り、バイバイと後ろ手に手を振るオニイは妙に足早だ。
10時きっかりに電話のベルが鳴った。 慌てて飛びついた受話器から聞こえてきたのは「お兄ちゃん、どうやったの?」という、実家の母ののどかな声。数日前に発表は終わったものと思っていたらしい。 「今から発表で、オニイから電話がかかってくるかもしれないから」と慌てて母からの電話を切る。 受話器を置いたまさにその瞬間、再び電話が鳴った。
「かあさん、僕・・・。・・・残念ながら・・・・合格しました!」 馬鹿者! こんな大事ときに変な冗談を言うな! 心配してたんだぞ! 「ごめん。ありがと」 よかったね、ほっとしたよ。 おめでとう。
午後からさっそくで入学説明会。 入学までの手続きや校則の説明、制服や体操服などの採寸、申し込み。 怒涛のように先生方のお話が続いて、受験生はあっと言う間に新入生の顔になっていく。 オニイの選んだ高校は、ちょっと古風な感じの田舎の普通科公立高校。 生真面目そうな校風がオニイにはちょうどいい。校内で見かけた在校生の先輩たちも変に崩れたところがなくて、おっとりしたのどかな顔をしているような気がする。 今日改めて気がついたが、この学校の女生徒の制服は30年前私が通っていた母校の制服にそっくりの紺のブレザーと長めのプリーツスカート。男の子の詰襟学生服も母校のそれとよく似ている、 以前にこの学校を見学に訪れたとき、なんだか懐かしい思いがしたのはきっとこの旧式な野暮ったい制服のせいかもしれない。
この学校での3年間。 オニイはどんな人と出会い、どんなことを学ぶのだろう。 たくさん挑戦して、たくさん寄り道して、たくさん悩んで、実り多い学校生活にして欲しい。 成長を見込んでワンサイズ大きめをえらんだ詰襟の学生服。 まだ服の中で泳いでいるオニイの痩せた体が、強くたくましく成長していくことを祈る。 おめでとう、オニイ。 よく頑張った。
|