月の輪通信 日々の想い
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朝、剣道。 道場まで車で送ろうとしていたら、久々に稽古に参加するオニイが 「今日は、後半の稽古にも残りたいから、僕は自転車で行くわ。」 と言う。後半の稽古に参加できるのは中学生以上。子ども稽古だけで帰るゲンと迎えの時間がずれるのを気遣ってのことだろう。 剣道着の上に上着を引っ掛け、ごつい手袋をはめてワシワシとペダルをこいで坂を下っていく姿は颯爽としていてなかなかイカしてる。 大きくなったなぁと感慨にふけっていたら、助手席のゲンが「なんか、お兄ちゃん、かっこいいやんな。」とつぶやいた。 ひょろひょろ痩せっぽちでオタクなオニイだけれど、小学生のゲンにとっては高校生になろうとしている4つ年上の兄がちょっと大人に見えるのだろう。 この間は車で、オニイが通うことになるかもしれない高校の前を初めて通って、「オニイはこんな遠くまで自転車で通うことになるのか」と驚いていた。 「お兄ちゃんってすごいなぁ。」と思う気持ちが、素直に賞賛の言葉になってこぼれでるゲンもなかなかいい。 よい弟だ。
途中、オニイを追い越していくときに、車を路側に止めて重い防具袋や嵩張る竹刀袋を車につんで運んでやろうかと聞いたら、要らないと言う。 「これ持ってないと、剣道着で自転車乗っててもカッコつかないし・・・」 と言うことだそうだ。 確かに手ぶらで剣道着姿ってのは間が抜けている。重い荷物もオニイなりのええカッコしぃの一部なのだろう。
高校生になっても、オニイはまだ剣道の道場には通うつもりらしい。 もうながいこと愛用している防具や防具袋も小さくなってそろそろ買い替え時だ。竹刀袋ももう一つ長いサイズの竹刀を使うようになったら、新調しなければならない。 「高校生になっても剣道を続けられるようなら、新しい物を購入しよう」と言っていただけに、避けられない出費か。 それでも、考えてみれば小さい頃、ちびっ子のヘナチョコ剣士だったオニイが、良くぞここまで稽古に通い続けた。 偉い偉い。
剣道から帰ってくるとアプコが、ピンクの自転車で家の前の道をびゅんびゅん走り回っていた。こまなし自転車に乗れるようになったのがうれしくてたまらないのだ。 アプコの自転車は、従姉妹からお下がりのキティちゃんの幼児用自転車。ハンドルは錆びているし、この間転んでペダルは半欠けになってしまったが、アプコはそんなことはいっこうにお構いなし。自分でこぐ自転車のスピードに自分で酔っているのだ。 ぐいぐいペダルを踏むことで、どんな遠くへでもいけそうな、どんな速い自動車にの追いつけそうな、そんな晴れやかな気持ちになる。 子どもにとっては自転車って、そういうものだったのだということを急に思い出した。
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