月の輪通信 日々の想い
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朝、ゲンを剣道に送る。 普段は小学校の体育館を借りて稽古しているけれど今日は市の武道館での合同稽古。市内のほかの道場の子や先生たちが大勢集まっている。 比較的早い時間に人数のそろったK道場の子達が、正方形の4隅から対角線状に2人づつ面打ちを始めた。多分そこの道場ではいつも稽古前の準備運動代わりにこの方法を採用しているのだろう。まだ防具もつけていないような小さい子も、自分の身支度を終えると物怖じすることなく自分のポジションに入り込むことが出来ているようだ。 ところがわがA道場のメンバーにとっては、それはこれまでおそらくみたことがない練習方法。どのポイントにどのタイミングで入っていけばいいのかわからなくて右往左往している。小さい子達はいつもよりさらにモタモタと胴や垂れをつけなおしたりして、様子見に終始しているようだった。 外で見ている母たちは、子どもたちの躊躇がもどかしくて仕方がない。 「早く竹刀持って立ち上がりなさい」 「どこでもいいから、早く紛れ込んじゃえばいいのに」 と、口々に言うが子どもらにはその声は聞こえない。 やがてA道場で一番年長だったゲンがそれとな〜くK道場の練習の波にもぐりこみ、それに続いて下級生たちがパラパラと面打ちの列に紛れ込んだ。
こういうときに、さりげなく紛れ込む間合いをはかったり、流れに遅れないように回りを観察しながら行動したり、こういうことって今の子どもたちにはとっても大事な勉強。 「周りの空気を読む」ってヤツかな。 世の中に出て行けば「さぁ、どうぞ、ここからお入りください」と親切に手招きして迎えてくれる所ばかりではない。 ちょうどスキーのリフトや観覧車に乗るときのように、自分でタイミングを計ってその場の流れを乱さぬように要領よく渡っていかなければならない場面がいっぱいあるのだ。
「今日の稽古はさすがにきつかったわ。」 稽古を終えたゲンの剣道着からは久々につんと汗の匂いがした。今日は本物の春みたいに暖かい日だったからね。
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