月の輪通信 日々の想い
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夜中、東京での一週間の個展を終えて父さんが帰ってきた。会場の片づけを済ませ、作品をワゴン車に積み込んで、義兄と交替で運転しながら7時間のドライブ。お疲れさん。 たった一週間の不在だったのに、朝起きて居間のいつもの場所に父さんの姿を見つけて微妙に照れくさそうな子供たち。 おばかだなぁ。
オニイの後期入試。 今朝、公立後期の受験希望調査の結果が新聞に発表になっていた。 オニイが受験を勧められたAB二つの学校。校風も学力レベルも通学距離もよく似た学校だけれど、B校は微妙に定員割れ。 「ねぇねぇ、定員割れだったら全員合格ってこと?」と微妙に心が揺れる。 A校にほぼ志望を固めつつあったオニイ、困った顔をしている。 担任の先生は「出願期間は3日間あるから、出願状況を見て最終日に願書を出すといいよ」と言われたそうだ。 「A高校だったら電車通学もできるよね。」 「でも、自転車通学だったらB高校のほうが近いよね。」 迷うオニイに、いじわるな母は面白がって立て続けに茶々を入れる。 「いったい母さんはどっちへ行って欲しいの?」と言いたげなオニイ。 今日は学校帰りに自転車でB校へ下見に行ってくるという。 迷え、迷え。 どっちの学校を受けよう? そういう前向きの悩みはたっぷり味わうといい。過ぎてしまった失敗をいつまでも悔やんでいるよりずっといい。 「絶対この学校!」と自分で決断できるまで、母はもっともっと横から茶々を入れてあげる。
オニイの帰宅後、再び担任の先生から電話。 新聞の発表では定員割れになっていたB校。その後志願者がどっと流れ込んだらしい。「今のところA校のほうが有利らしい。」とのこと。 なんだか、株価情報に踊らされて右往左往する新米投資家のようで笑ってしまう。 高校入試は子どもにとってはもしかしたら一生の問題。よそ事の顔をして笑っている場合ではないのだけれど、それでもやっぱり「たかが高校」じゃないか。他の志願者があっちに流れた、こっちにぎりぎりまで情報に翻弄されてうろたえるのも浅ましい。 オニイ自身ももしかしたら同じ想いを抱いたのだろう。 「母さん、僕はやっぱりA校を受ける。倍率が少々変わっても、もういいや。初日に願書、出してくる。いいかな?」 ときっぱりと言う。
後でオニイに何故A校を選んだか聞いてみた。 「B校は街中で空気が悪い。A校は回りも田舎で空気がいい。 僕、空気の悪いのは苦手なんや。」 それでいい。 時にはそういう直感で選んでもいいんだよ。 大事なことは君自身が自分で選んだと言うこと。 もう一回頑張って来い。 不合格でも、道はある。 父さん母さんは、通帳片手に私学の学費の算段でもしながら応援する。
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