月の輪通信 日々の想い
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朝から父さんと郊外にできた大型ホームセンターへ出かけた。ホームセンターとはいいながら、食品スーパーから建築用の資材、ガーデニング用品、フードコートまで、広大な店舗にいろんな商品が満載で、父さんと二人、思わずワクワクとしてしまった。ことに、2階にはかなり専門的なクラフト関係の店舗があり、小型の東急ハンズの観。 ずらりと並んだカラフルなぺーパー類や、使い方も分からない金工やガラス工芸の資材などを飽きずに眺める。 父さんは陶芸の道具類や粘土をあれこれチェックして、「専門店よりやや割高だけれど、近くで来店の便がいいので便利かも」との結論。 子ども達を連れてきたら、一日中楽しく遊べそうだ。 帰りに何故か冬用の掛け布団を衝動買い。 ちょっと嬉しい。
膨大な商品の氾濫に酔っ払ったようになって、帰宅の途に着く。 久々に出かける大型店舗は確かに楽しいし、ご近所にこんな店があったら、休日の暇つぶしには事欠かないなぁとうらやましくなるけれど、きっとそれなりにアレもコレも欲しくなって、きりがないだろうなぁと思ったりもする。 ちょうどアプコの下校時間ぎりぎりだ。 家の近くまで来ると、ちょうどアプコと同じくらいの女の子達が手に手に大きなナイロン袋を持って、ワイワイがやがやと下校中。袋の中身はふさふさと青い葉っぱつきの大きな大根だった。 「ずいぶん大荷物で帰ってるねぇ、引きずりそうだよ」と笑っていたら、ちょうどうちのアプコが同じように大きな大根を重そうに抱えて歩いているのに追いついた。 既に帰路の半分くらいを大きな大根を抱えて一人で歩いていたアプコは父さんの車を見ると心底ホッとした様子で、乗り込んでくる。 「うわー、大きな大根だねぇ。重かったでしょう」 「うん。学級園の大根、好きなのもって帰っていいっていわれたから、一番大きいの、抜いてきたの。」 と息を弾ませて答えるアプコ。 なんだかとっても嬉しそうだ。
子どもらが通う小学校は、生徒数の割に敷地面積がやたらと広い学校で、校内に広い学級園や水田、山の斜面を利用したアスレティック、常設の屋外炊飯施設など、自然と親しむ事の出来る施設が充実している。 学級園での野菜の栽培も、家庭菜園の域はとうに超えてちょっとした農作業の本格バージョン。たまにもって帰ってくる収穫物も近所のスーパーで見かける野菜顔負けの立派な出来栄えのものが多い。 春には校内でいちご狩り、夏にはキュウリやトマトの大収穫、秋にはお芋掘りをして木の葉で焼き芋と、色々な体験をさせてもらって帰ってくる。多分先生方の裏方のお手伝いの賜物だろうとは思うけれど、収穫した野菜をさも一人で拵えたかのような得意げな顔で持ち帰る子どもらの嬉しさはまた格別。 良い経験をたくさんさせていただいているなぁと思う。
確かにアプコが選んできたお大根はとてつもなく大きかった。 ふさふさとした青葉を切り取ってばさばさと洗い、芯の部分を少しむしらずにとっておいて、浅い皿に水を張って芯を浮かべる。ピカピカ大根に敬意を表しての新芽の水栽培だ。 まだ土の残る実のほうはアプコが自分で洗いたいというので、流しの前に踏み台を置いて洗い桶に水をためて、洗ってもらう。 大きな葉っぱの部分を取り払っても、まだその実の重さはアプコの手に余るようで、ごろんごろんと大根を転がすたび、ピシャピシャと派手に水しぶきがあがった。 とりあえず、青葉の部分は細かく刻んで醤油味の油いために、実の頭のほうを細かく刻んで青葉のみじん切りとあわせて浅漬けにする。 調理の途中で、薄い半円形に刻んだ生の大根をアプコに渡したら、ぱりっと齧ってみて、「おかあさん、大根って甘いね。」と目を丸くして言う。 普段お刺身に添えてある大根の「けん」が大好きなアプコは、自分の収穫してきた大根を齧ってみてはじめて、「けん」と大根が頭の中でつながったらしい。 「そうか、お刺身についてる白いヤツはだいこんだったのか。」 といつまでも感心しているアプコが可愛い。 自分の知らないものの本質をはじめて身をもって理解するという事は、こういうことなんだろうなぁと思ったりする。
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