月の輪通信 日々の想い
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2005年08月09日(火) 受験生におせんべい

夏休みの前半戦、部活やプール、キャンプやお祭りの日程も順調に消化し、お盆休み前のゆるゆるとした一週間をすごす。
母も前半のハイペースをやっつけて、少々グロッキー気味だ。
「今のうちに宿題を片付けなさいよ。」と昼間の数時間、階下の一部屋だけクーラーをつけて、学習室にかこつけて、子どもたちに提供する。
座敷机で子ども達が夏休みのプリントに取り組む間、極楽極楽と涼をとる。
ああ、おとなになっててよかった。
少なくとも大人の夏には宿題プリントがない。

オニイ、今年は一応受験生。
「夏休みは相当の覚悟で頑張らなくっちゃね」と個人懇談でしっかり念を押されただけあって、例年よりは少しは気合が入っているらしい。とりあえず宿題だけは、いつもより速いペースで片付けているようだ。
家庭の方針(というより、経済的理由?)により、塾も夏期講習もない中三の夏。どんな風に時間を使い、何をどれだけ学んでいくのか、それを自分で決めて自分でこなしていくのは難しい。
「受験生がそんなのんびりした事でいいのかしらん?」という思いと、「まずは本人のやる気から・・・」と期待する思いと、複雑に入り混じった思い意で、オニイの夏を見守っている。

義兄や父さんたちの仕事の都合で、工房の留守番が必要になった。
ちょうどいい、行っておいで・・と、オニイに声がかかった。
うるさい弟妹達や母の小言、蒸し暑い子ども部屋を離れて、ガンガンにクーラーの効いた教室を独り占め。コレはちょっと美味しい話。
「受験生でござい!」とカッコつけて、問題集や参考書を持って出かけていって小一時間。はてさて、勉強ははかどっていたのかな。
よもや涼しい教室で広々とお昼寝って事はあるまいね。

帰ってきたオニイのかばんから、大判のおせんべいが2枚。
留守番中にひいばあちゃんが差し入れてくれたのだという。
よほどオニイが真面目にお勉強しているように見えたのだろうか。
いつものお仏壇の前のお菓子の缶から、子どもの好みそうなお菓子を見繕って運んでくださるひいばあちゃんのすり足の足音が思い浮かぶ。
「時々、ひいばあちゃんがくれるこのおかき、うまいんだよな。」と、オニイ、目を細めて大事そうにかばんにしまう。

普段、激辛スナック菓子大好きのオニイが、そんな素朴なおしょうゆ味のおせんべいを格別好きなのだとは知らなかった。
きっと、オニイが「旨い」と思うのは、おせんべいそのものの味ではなく、「僕が勉強に励んでいたらそっとお菓子を差し入れてくれるひいばあちゃん」というシチュエーションが、ありふれた醤油せんべいに格別ありがたい、やさしい味付けをしてくれたものだろう。
そういう事の嬉しさをしみじみと感じる事の出来るオニイもまたやさしい。
母もちょっと嬉しい。


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