月の輪通信 日々の想い
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2005年08月03日(水) アプコのクロール

アプコ、連日のプール通い。
オニイ、オネエの小さい頃から、我が家の夏休みの前半は意地のように皆勤に、村の小さな低学年用のプールへ通う。
若宮のプールは村の運営で毎年小さい子ども達に無料で開放されており、毎日お母さんたちが交代でプール当番や掃除に携わる。幼児から3年生までの小さい子達のためプールだ。
本来ならアプコはもう一年生なので一人でいってもよいのだけれど、行きかえりの道中の心配もあって、相変わらず母の付き添いつきだ。大きな浮き輪とプールバッグを車に積み込み、ブルルンとプールへ向かう。
青いプールで嬉しげにはしゃぐ子ども達を見ながら、母は木陰で2時間、「暑い暑い」と愚痴りながら無為の2時間を過ごす。
こんな夏がもう、9年も続いている。

一年生になった今年、初めて学校でバタ足や伏し浮きなど水泳らしきものを教えていただいてきたアプコ。
去年まで大事に抱えていた浮き輪を手放し、何度も何度もプールの端から端へと往復して、自己流の泳ぎの練習に余念がない。
「おかあさん、みてみて!」
と大きく腕を廻し、バタバタと派手な水しぶきを上げてバタ足をして、そろそろと進む。どうやらクロールのつもりらしい。そのフォームは自己流なので腰は曲がってくねくねと半分沈んでいるし、腕も終いには犬掻きのようになって、傍から見ていると「溺れたか?!」と見紛うような動きだが、アプコははじめてのクロールの感覚が嬉しくてたまらない。
近頃では、幼児の頃からスイミングスクールに通う子が多くなった。一年生でも驚くほど綺麗なフォームのクロールですいすいと泳ぐ姿を見ることも多い。学校の水泳指導でも、既に上手に泳げる子が多くなって、昔ほど「水に慣れる」「水に顔をつける」等と言う初歩的な段階で躓く子は少なくなっているのだろう。全体として、その年齢で期待される泳力の到達基準と言うのは上がってきているようだなと感じる。
アプコのように真っ白な頭で、バシャバシャ水遊びの状態から学校の授業ではじめて泳ぎを習う子は少ないのかもしれない。

それにしても、アプコの嬉しそうな泳ぎっぷりはどうだろう。
日に焼けた小さい体を十二分に動かして、水にもぐり、水に浮かび、ことさらに水しぶきを上げて歓声をあげる。水の中で新しい動きを一つ、また一つと経験していく事が楽しくてたまらないのだ。
そんな楽しい遊びの中で「あ、いま、浮いた!」という発見や「アタシって今、いるかみたい!」という感覚や、水の中ででんぐり返って天地が混乱してしまう楽しさを一つ一つ獲得していく。
こういう泳ぎの学び方も、それはそれでなんだかいいよなぁと思ったりする。

水のなかで、しばし魚に戻るアプコ。
速く泳ごうとか、もっと遠くまで泳ごうとか、そんな目当てもなしにただただ水に親しむその楽しみだけのために泳ぐ幼いアプコの無心がなんともいとおしい。
いるかになったアプコの歓声を聞く。
そのためだけに、母は連日の猛暑をおして、プール番に出かけていくのだ。
親バカと笑うしかない。


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