月の輪通信 日々の想い
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洗濯物の中に、見慣れぬハンカチが混じっていた。 薄いピンクにバラの小花の散った美しいハンカチ。 アユコのではない。もちろんアプコのでもない。そして残念ながら私のでもない。 ハンドタオルばやりの昨今、こんな薄霞のような華奢なハンカチを持つ人はどんな人なのだろう。 そして、その几帳面に畳まれたハンカチを「はい、これ・・・」とさりげなく差し出すことの出来る人は一体誰なんだろう。
ハンカチを集めるのが、好きだった。 特に小花模様の大判の木綿のハンカチ。 一度使えばすぐに水気を含んでしなしなっとなってしまう薄様のようなハンカチに隅々までピシッとアイロンをかけて、その日の服装に合わせた数枚をバッグの中に忍ばせる。 時にはデパートの用品売り場で、まるでよそ行きのブラウスでも選ぶように何十分もかけて一枚のハンカチを選ぶ事もあった。 結婚して、お飾りような薄様ハンカチは赤ん坊の乳で汚れた口元をぬぐうガーゼのハンカチになり、お食事エプロンの代用にもなる大判のハンドタオルになり、急に巷にあふれ出したミニサイズのハンドタオルに落ち着いた。 今、私の買い物袋の中にはいつも、アイロンの手間の要らない実用的なミニハンドタオルが数枚。お子様向きのキャラクター柄のが少し駆逐されはじめ、少しづつ落ち着いた色合いのタオルの割合が増えた。 青春の日々を共に過ごした美しい絵柄の華奢な木綿のハンカチたちは、久しくたんすの引き出しに眠ったままだ。 まさに女の一生だなぁと思う。
さてさて、謎の花柄ハンカチ。 このところ工房に缶ヅメ状態の父さんには近づく妙齢のご婦人の影はない。 汚し屋のゲンには、まだまだ洗いさらしたゴツいタオルハンカチの方が必要だ。 それではもしかして、オニイに遅まきの春の予感?
・・・・と、ニタニタ笑っていたら、謎が判明。 どうやら麗しい花柄ハンカチの持ち主は中学の担任のM先生らしい。 給食のときトレー代わりに敷く給食ナプキンを忘れたオニイに、先生が貸してくださったのだという。 なぁんだ、つまらない。 M先生は何かと面倒見もよく、ガハハと陽気に笑う家庭科の先生。典型的な大阪のおばちゃんだ。(ごめんなさい!) よく見ると、ピンクの花柄ハンカチの隅には「Takarazuka Revue」の飾り文字。 ああ、そうか、宝塚ね・・・。
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