月の輪通信 日々の想い
目次|過去|未来
ゲン、淡路島への宿泊学習に出かけた。 天候はあいにくの曇り空。これから雨が降るという。 地引網体験やキャンプファイヤー、ちゃんとできるといいのになぁ。 昼前からしっかり雨降り。 久しぶりにお洗濯物は部屋干しだ。うっとおしい。
午後、アプコの下校時間を見計らって、歩いて迎えに出る。 久しぶりに歩く雨の山道はしんと静かで、木々のこずえを打つ雨の音と傘に当たる水滴の音、そして砂利道を歩く自分の足音が耳に静かに染み込んで来る。 時折、ホトトギスの鳴く声がする。 雨もいいなぁと思ったりする。
坂をぐんぐん下っていったら、向こうのほうから小さい子どもの声が聞こえてくる。 妙な節がついてるなぁと思っていたら、やっぱりアプコの歌声だった。 赤い傘をくるくる回しながら、大きな声で鼻歌を歌いながら歩いてくる。 友だちとさよならして、ひと気のない坂道を歩きながら、一人で楽しげに歌っているのだ。普段は照れ屋で、「歌ってよ」と乞われると大概笑って隠れてしまうアプコなのに、一人ぼっちだとこんなに大きな声で歌っているんだな。 アプコはまだ、カーブのこちら側で立ち止まっている母の姿に気がつかなくて、上機嫌で調子っぱずれの裏声で楽しげに歌っている。 かわいいなぁ。 歌っている歌は小学校の校歌だった。
母の姿を遠くに視とめて、ぴゅーっと駆け出してくるアプコ。 ランドセルがカタカタ鳴って、横にぶら下げた給食袋が大きくゆれる。 「おかあさん、あのね、今日は音楽があったよ」という。 「あ、そう。じゃ、今日は小学校の校歌、習ったでしょ?」 「へ?何で知ってんの?」 アプコは自分がついさっきまで習ったばかりの校歌を大きな声で歌っていた事をすっかり忘れている。 「さぁねぇ、なんでかねぇ。」 と誤魔化すと 「皆が歌ってるの、お家まで聞こえた?ね、大きな声だったでしょ?上手やった?」 と繰り返し聞いてくる。 「うんうん、上手やった。」 と調子を合わす。
母の知らないところで、友だちと歌を歌い、大きな声で本読みをし、のぼり棒に挑戦するアプコ。 学校に居る子どもの行動の全てを家に居る母にはわかるわけがないのに、アプコはどこかで、自分の歌う歌や本読みの声や校庭での汗の全てを母が見聞きして知っているように思い込んでいる。 幼いアプコのささやかな思い込みが本当は私には嬉しかったりする。 まだまだ、私とこの子のへその緒のつながりが消滅していないような気がして・・・。
|