月の輪通信 日々の想い
目次|過去|未来
オニイとアユコ、中間テストの結果が帰ってくる。 初めての定期テストで、ドキドキしながら試験勉強をしていたアユコ、思わぬ高得点を持ち帰ってきて得意げに父母に見せる。 こつこつと計画を立てて、一つ一つ確実にこなしていくアユコの日頃の努力あればこそ。良し良し。 かたや、オニイ。 浮かない顔でPCの画面をにらんでいる。 「今回はずいぶん頑張って試験勉強したぞ」と言っていたのに、結果はあまり思わしくなかったらしい。三年生になって、オニイも今までよりはずっと頑張っていたけれど、まわりもみんな急に頑張るようになってきてるんだよ。 アユコの弾んだ声が癇に触って、イライラをあたりに吐き散らすオニイ。 あ〜あ、また落ち込んじゃったよ。 デキる妹をもつととオニイは辛いね。
「かあさんは、また僕とアユコを比べるやろう。」とオニイが言う。 私自身は学校の成績の良いアユコと努力がなかなか点数につながらないオニイの事を、比較して叱ったりせきたてたりしているつもりは無いのだけれど、長男として後を追ってくる弟妹達のデキをいちいち気にするオニイから見ると、中学に入って急に間近に追い上げをかけてくるアユコの存在はやはり鬱陶しい脅威なのだろう。 本当は妹と比べて卑下したり落ち込んだりしているのは、母ではなく、オニイ自身のプライドなのだ。
あのなぁ、オニイ。 母にとっては、どの子にも一番輝いているように見える時があってな。今はもしかしたテストで高得点を取ってくるアユコが一番キラキラ輝いて見えるかもしれん。時には絵を描いたり物を作ったりすることに熱中しているゲンがキラキラ輝いて見えるときもある。 もちろん君にだって、これまでに何度もひときわキラキラと輝いて見せてくれたときがあったんよ。
人はね、学校の成績がよくて輝くこともある。 学校の成績はさっぱりだったけど、社会に出て仕事を始めたらイキイキと活躍できるという人もある。 幼い子どものときに、その才能や能力がひときわ輝きを放つ人も居る。 ことさら、目だった輝きはないけれど、日々の静かな営みや穏やかでやさしいその人柄が、時を経て次第に輝きを増す人も居る。 もしかしたら、一生涯いいとこなしで、本当に人生の間際になってようやく小さな輝きを放つ人も居るかもしれない。
たまたま今の君にとっては、アユコは輝いて見えるかもしれないけれど、 母が本当に見ているのは今だけのアユコじゃない。今だけの君じゃない。 これまでだって、母は君が一番輝いていたときをいっぱい知ってるよ。 アユコが凹んでペシャンコになってるときだって知ってるよ。 それから、君やアユコがこれから先、もっともっとキラキラ輝くときがくるだろうという事もちゃんと知っているんだ。 今の君、今のアユコだけを見て、比較したり見下したり誉めそやしたりを母はしない。 どの子も同じくらい大事。 どの子にも同じくらい期待してる。 どの子も母の希望の星なんだ。
オニイ、そんなに落ち込むな。 悔やむなら、アユコと比べて卑下するのではなく、自分の力不足や努力不足をまっすぐに悔やめ。 君はいつ、輝く?
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