月の輪通信 日々の想い
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2005年03月31日(木) りんごの皮をむく

昨日の夕食後、アユコが急にフルーツが食べたいと言う。
「自分で剥いて食べるんならどうぞ」というと、台所の隅に積んであったポンカンを取ってきて、コタツの向こう側で熱心に剥きはじめた。
横からアプコも調子に乗って、「アタシはりんごが食べたい」と言う。
今度はアユコが「自分で取ってくるんならどうぞ」とアプコに言い、アプコは喜び勇んでりんごを取ってくる。
アユコの横にちょこんと座り、くるくるとりんごを剥いてくれるのを楽しげに眺めている。
まるで親子じゃん。
ずぼら母!娘達にりんごくらい、剥いてやれよ。
アユ姉、悪いねぇ。

アプコ、包丁をおもちゃにして、アユコが剥き終わったりんごの皮を小さく刻んで遊ぶ。
「おいおい、アプコ、手ェ切るぞ。危なっかしくて見てられない。」と横からオニイが叱る。
「切らないよーだ。だって包丁の練習してるんだもん。」とアプコが唇を尖らせて反撃する。
あはは、オニイったら、心配性は父さんそっくりだと思っていたら、
「ほっといても大丈夫よ、そうやって刃物の扱いを覚えるんだから。」
とアユコが悟りきった口調でオニイに意見する。
ありゃりゃ、この放任育児法は、母そっくりか。
いやぁ、面目ない。

しばらくして、アプコとオネエは一緒にお風呂に入る。
剥き終わった果物の皮や包丁まな板は、コタツの上に出しっぱなしだ。
「自分で食べた後は片づけまできちんとやって欲しいわね。」
とたまには母親らしく、説教の一つもしてやろうと思っていたら、お風呂上りのアプコが濡れた髪のままですたすたやってきて、自分が切り刻んだりんごの皮やオネエが剥いたポンカンの皮を黙ってそそくさとスーパーの袋に入れ始めた。
きっとアユコの指令が出ているのだろう。 
そのタイミングと手つきは、私の、そしてアユ姉のそれとそっくり。こんな些細な行為の一つ一つが母から、姉から、小さいアプコには継承されていくのだなぁと言う事が何となく可笑しく、何となく怖い。
恐るべし、我が家のちいママ、アユコ。
母にはもう、あんた達に教えることはないよ。
アユコ、これからもしっかりアプコを育ててね。

今朝、食べる時期を逸したりんごを甘煮にしてかたづけてしまおうと思いついた。
「あ、それ、やらせてやらせて。」
とどこからかアユコが飛んでくる。
アユコはりんごの皮を剥くのがすきなのだ。
「じゃ、全部剥いて刻んどいてね。」
とごろごろと5、6このりんごを渡す。
丸のままのりんごをくるくると回しながら、途切れずに長〜く皮を剥く事に熱中するアユコ。さすがに包丁の扱いもずいぶん上手になったなぁ。
スパンスパンと向けたりんごを四半分に割って、芯を取っては小さく刻む。包丁の腹を使って、ステンレスのお鍋に切れたものを運ぶ手つきも何となく主婦っぽい。
「ねぇねぇ、アユコ、芯はもう少し深く取ってよ。」
というと、アユコ、ちょっと困った顔をして
「芯を取るのって、なんか手まで切っちゃいそうで、まだちょっとこわいんだ。」
という。
アユコの切りかけのりんごを受け取って、ザクッと深く切り込んで芯を除ける。「一回目に包丁を深めに入れるといいよ。」と包丁を返すと、アユコがほぉっとため息をつく。
こんな些細な事でそんなに感嘆してもらって嬉しいよ。

ああ、しっかり者のアユコにも、まだまだ苦手はあるんだな。
母にもまだ、アンタに教えることの出来る事が少しは残っているらしい。
ほんの些細な事でもね。

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