月の輪通信 日々の想い
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2005年03月18日(金) 卒業式のポケット

昨晩からの雨の名残の残る卒業式の朝。
「久しぶりにスカートはいたら寒いわぁ」
と朝から何となく落ち着かないアユコ。
ここ数日、友人達との残り少ない小学校生活を惜しむように、ずっとハイテンションで登校していた。たくさんの友達に恵まれ、信頼できる先生方と出会い、楽しい経験や行事を色々経験して、晴れやかに迎える卒業式。
長い人生のまだまだほんの入り口に立ったばかりとは思いつつ、ぐんと背も延びて女の子らしいしぐさも目につくようになってきたアユコの成長振りに母も何となく心が揺れる。
父さんも早々に朝の仕事を切り上げて、ネクタイを締める。
「なんだか6年間もあっという間だったネェ。」
先日のアプコの卒園式とはまた違う感慨がこみ上げる。

卒業式にあわせて、久しぶりのアユコのスカートを縫った。
アユコの好きな水色のチェックでちょっと長めのフレアスカート。長くのびた前髪をきゅっと後ろに掻きあげて束ねた髪型にちょっと古風なフレアスカートは生真面目なアユコらしくてよく似合う。
デパートの式服売り場ではなかなかお気に入りの衣装に出会うことが出来ず、値札の数字にも嘆息していたら、アユコが母の作った服でもいいと言ってくれたのだ。
小さい頃には母の作ったジャンバースカートやワンピースを喜んできていたアユコも最近ではジーンズやパンツ姿が多くなり、ホームメイドの服をきる機会は何時しかなくなった。それを寂しいとは思いつつも、こちらもなかなかお裁縫に精を出す時間的な余裕も無くて、我が家のミシンは雑巾作成専用機に落ちぶれている。それだけにアユコの申し出は嬉しくもあり、意外だった。
普段着のバーゲン品の値札をよく知っているので、デパートのブランド品の破格の値段に恐れをなして遠慮したのかなと思って聞いてみたら、
「入学のときにも、お母さんの縫ったワンピースを着たのだから、卒業式のときにもお母さんの作ったスカートがいい」
と泣かせる台詞を言ってくれた。

入学のとき、アユコに着せた紺と緑のチェックのワンピースもチクチク夜なべをして私が縫った。あの頃のアユコは恥ずかしがりやの泣き虫で、名前を呼ばれてもきゅんと小さくなって母の後ろに隠れるような女の子だった。
たくさんの新入生の中にまぎれて、唇を引き結んできょろきょろと落ち着き無く周りを見回していた小さいアユコの姿を思い出す。
今のアユコのような、仲のよい友達ともつれ合って笑い、クラスの男の子達のことを手のかかる弟分のように話す姐御肌の活発な女の子の姿はあのころ想像すら出来なかった。
おおきくなったもんだなぁと思う。
「どんどん大きくなるから・・・」の親心でついつい大きめに作って後から縫い縮めたワンピースは、この四月、同じ年頃のアユコよりは少し成長の早いアプコの入学式の衣装として再登場する。
「振り出しに戻る」だなぁとも思いつつ、アプコにもアユコのような充実した楽しい小学校生活が迎えられるようにと願う。

アユコのスカート。
作るに当たってアユコからはたった一つだけ、リクエストがあった。
「スカートには絶対ポケットを作ってね。ハンカチ、入れるから。」
そうだねぇ、最後のコーラス時には感激してぽろぽろ泣いちゃうかもしれないもんね。久しぶりに洋裁の手引書を引っ張り出して、やっとの事でポケットもつけた。
身支度の最後に綺麗にたたんだハンカチをしっかり持って、アユコ巣立ちの日。
いっぱい友達と握手して、先生と一緒に涙を流して、ポケットいっぱいに思い出を詰め込んでおいでね。


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