月の輪通信 日々の想い
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ゲンがオニイの新しい眼鏡を壊した。 兄弟げんかの最中、何かの弾みで壊したのだという。 ちょうど眼鏡が鼻に当たる部分の金具がぽきりと折れて取れてしまった。
オニイが体育の時間サッカーのボールが当たって壊れたという眼鏡を、急ごしらえで新調したのはつい十日ほど前。 どうせすぐに壊すか度が変わって買い換えなければならないのだからと、店員の勧める「形状記憶」フレームだの薄型レンズだののオプションを全て断って、とりあえず「安い、早い」を基準に選んだ眼鏡だった。 だからといって、何もたった十日で壊さなくてもいいじゃないの。 アユコ、アプコの入学準備や何やかやで特別な出費の続くこの時期に、これは少々痛い。 オニイもゲンに腹を立てながらも、父母に対しては申し訳なさそうにシュンとしている。 ゲンもケンカの勢いでつい手が出てしまった自分の短気をただただ反省。 プリプリ怒る母を尻目に、父さんが瞬間接着剤やら半田ごてやらを持ち出して壊れた眼鏡の応急処置を試みる。 折れたのは鼻宛を支える細い金具で、器用な父さんがいろいろ苦心して繋いでは見たが、多分それほど持たないだろう。 諦めてもう一度新調するか。 オニイもゲンも、男の子にしてはおとなしい方で、取っ組み合いのけんかも怪我をするほどの殴りあいもついぞ見たことはない。 たまには眼鏡を壊す程度の兄弟喧嘩も、仕方がない事なのか。
で、喧嘩の原因がなんだったのか、聞くのを忘れた。 もしかしたら本人達も、何が原因だったか忘れているのかもしれない。 兄弟げんかというのは大体そんなもんだ。 それにしてもたった十日で早世してしまったオニイの眼鏡。 嗚呼!<
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