月の輪通信 日々の想い
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2004年12月24日(金) 働き者

例年のことながら、今年も父さんは年末仕事に追われている。
年末から年明けにかけての干支の作品作り。
来春の干支をあしらった抹茶茶碗や置き物、香合など、たくさんの数物の作品を次から次へと拵えていく。
昼間は工房で窯の番をしながら、置物や茶碗の仕上げの仕事。
夜は夜で、うちに帰って、小さな香合の仕上げ仕事。
自分で自分にノルマを課して、ぎりぎりいっぱい仕事をする。
ドリンク剤や、眠気覚ましのコーヒーに頼りながら、どんどん自分を追い詰めていく仕事振りは、年も押し迫るにつれ、だんだん鬼気迫るものになってくる。
背中を丸め、眠気でまぶたが落ちそうになりながらも、こつこつと作品に取り組む恐るべき忍耐力。自分が頑張らなければ、工房の仕事が止まってしまうという意地が父さんの年末仕事へのエネルギーを支えているのだろう。
こういう差し迫った全力投球の徹夜仕事を、この人はこの先何年続けていくことができるのだろう。

年末態勢に入ると、日頃土に触れることがほとんど無い私も、香合や置物の小さな部品の型抜き仕事や簡単な釉薬がけの仕事の手伝いに入る。
今年は3つの部品に分かれた香合の型抜きと置物の釉薬がけの一端に手を出した。
何個も何個も同じものを抜く単純作業は、子どもが寝静まった後の夜なべ仕事。父さんと二人、放送の終わったTVの映像番組を流しながら、コタツでごそごそと内職仕事に励む。
一日にたった数時間の作業でも、肩がこり、土に脂分をとられて手指が荒れる。一日中、食事と短い仮眠時間のほかはほとんど全ての時間を仕事に費やす父さんのタフな仕事振りに感嘆する。

今日はクリスマスイブ。
例年どおりチキンを焼き、ゲンのご所望のシャンメリーも用意した。
何度も暖めなおしてすっかり整った食卓に、なかなか父さんが帰ってこない。「あと十分で帰るよ」といいながら、なかなか手元の仕事にキリがつかなくて、帰ってくることが出来ないのだ。
いつもは「おなかすいた〜ぁ」とうるさい子ども達も、今日は父さんの遅刻を辛抱強く待っている。
「お父さん、呼んでこようか?」と、いらだつ母に気遣ってアユコが訊く。
「あかん、あかん、父さんは仕事中や。」とオニイがアユコを止める。
暖かい食事をそろって食べさせたい母と、目の前の仕事を中途で止める事の出来ない父。
両方を気遣って、右往左往する子どもらがいる。
大きくなったなぁ、子ども達。
父の苦労も母の思いも両方ちゃんと汲み取ってくれる年齢になった。


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