月の輪通信 日々の想い
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2004年12月20日(月) サンタのお使い

朝、子ども達が出て行った後、大急ぎで家事を済ませて、今年2度目のサンタのお使いに出かける。

さすがに大きい子達はもうサンタの正体を知っているはずだけれども、我が家にはまだ幼いアプコがいるので、クリスマスのファンタジーはまだまだ形をとどめている。いつも空からやってくるサンタのために屋根裏収納の小窓を開け、この日ばかりはとさっさと寝間に入るアプコ。
「そろそろ、サンタさんに電話しとかないと、クリスマスに間に合わないよ」と今年のプレゼントのリクエストを聞きだし、「ありゃりゃ、ちゃんとお片づけしないとサンタさんが、いいものくれないかも・・・。」と脅し言葉を使う。毎年、12月の楽しい会話。
オニイやアユコも、「そんな高いもの、頼んでもダメだよ。」とアプコの欲張りをたしなめるときにも、「・・・って、サンタは言うと思うよ。」と用心深く付け加える。
「ホントはサンタはお父さんお母さんなんでしょ。」とは決して言葉にしないで、幼い頃父や母が苦心惨憺してはぐくんだクリスマスの演出の楽しさを末っ子アプコにも同じように味合わせてや牢と気遣ってくれるオニイ、オネエの優しさが嬉しい。

という訳で、今年のクリスマスのプレゼント。
オニイ、アユコはサンタの懐具合と買い物の手間を配慮して、早々に「僕は図書券」「あたしは『ハウル』の原作本」と手ごろなリクエストを申告してくれた。
問題はアプコとゲンだ。
コマーシャルを見ても新聞のチラシを見ても、次から次へと欲しいおもちゃが変わり、結局一本に絞れないアプコと、これといって格別欲しいものはないらしいゲン。
「おかあさん、何を頼んだらいいと思う?」
「クリスマスまで、あと○日かぁ・・・。」
と目が合えば、何かとクリスマスの話題につなげようとするゲンに、最初のうちは欲しいものを聞き出そうといちいち付き合ってはいたけれど、だんだんそれも面倒になってくる。
「欲しい欲しい」のアプコと違って、とりあえず「欲しいものゲット」の機会を逃したくなくて、無理やりあれこれカタログを物色しているゲンにだんだん腹も立ってくる。
「いっそ、今年は『サンタにお任せ』で行くかな・・・」とも言うのだが、横からオニイが、「じゃ、地球儀とか問題集とかそういうのが来ても文句言わないんだな。」と茶々を入れる。
そして、ついにはどこかのデパートのカタログの中から、今まで欲しがった事もないラジコンカーを指差して、「これでいいわ。」という始末。

「これいいわ」
には、さすがにカチンときた。
「あ、そう。でもね、その話題、もうお母さん飽きたわ。もう聞かないから。」
あ、しまったという顔をしてすごすごと引き下がるゲン。
それからは、ゲンが控えめに、「あのー、クリスマスなんだけど・・・」と切り出しても知らん振り。サンタの正体をホントはちゃんと知っているゲン、誰を怒らせたらまずいかもちゃんと判っているのだ。
事情を察したオニイ、オネエが「残念だったね。」とゲンをからかう。

みんな本当に小さな幼児だった頃、父さんと母さんはまだ自分の欲しいものがいえない子ども達にあれこれクリスマスのプレゼントを選ぶのは大変だった。
機関車トーマスの好きなゲンにプラレールのおもちゃを、戦隊物のヒーローに憧れるオニイには合体式のロボットを、夢見るお姫様のアユコにはおもちゃのピアノを・・・。
包みを開けて、思いがけないプレゼントにわぁっと歓声をあげる子どもらの笑顔が嬉しかった。
サンタクロースの正体がばれてからも、小さいアプコのためにあの嬉しさを残しておいてやりたいとは思うのだけれど、正直な所プレゼントを選ぶ親の気持ちも、手ごろなプレゼントをリクエストする子ども達の気持ちも、子どもらの成長に従って大きく変わってしまっている。
ちょうどそのハザマにいる中間子のゲンが、いみじくも今の我が家のクリスマスプレゼントに矛盾のわなに落ちた。
そろそろ今年あたり、屋根裏部屋のまどを開けて朝を待つクリスマスの習慣は終わりにするかなぁ。

今日、サンタのお使いに町へ出た私はアプコには希望通りのおもちゃと、ゲンには彼の希望ではない地味なプレゼントを用意した。
そして、毎年、決して選んだプレゼントに文句を言う事のない、亡くなった次女のためには、例年通り、ガラス細工のサンタやトナカイを買う。毎年一つ二つと買い揃えた儚いガラス細工は、もういくつになったのだろう。赤ちゃんのまま、成長する事のない娘に選ぶプレゼントは悲しい。
ぶうぶう文句を言いながらも、毎年成長していく子ども達にプレゼントを選ぶ喜びを忘れてしまっているのは母の方なのかもしれない。


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