月の輪通信 日々の想い
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2004年12月08日(水) 無駄に謝る

PTAの広報紙の仕事がほぼ一段落。
案の定、原稿提出から校正、写真のチェック、印刷代交渉と最後の最後までバタバタと駆けずり回ったが、今日、ようやく最終稿を印刷所へ持ち込み。
後はゲラチェックが通れば、本印刷、配布の運びとなる。
まずはめでたしめでたし。

印刷所の帰り、晴れ晴れとした気分でいつもと違うスーパーに寄った。
「お買い得品」の山の中に、とてもきれいなイチゴが格安値段で並んでいたので、きっとアプコが喜ぶなと2パック、カゴに入れる。いつもなら、冬のイチゴなんてめったに買わないのに、やっぱり大仕事を終えて、気持ちが緩んでいるのだなと確かに自覚する。
夜を徹してのパソコン仕事や、昼食時間も惜しんでの編集作業。
ここ10日ほどは、広報紙のことが四六時中頭から抜けなくて、家事もずいぶん手抜き気味。買い物にも十分心を掛ける事が出来なかったので、冷蔵庫の食材も少々品薄だ。今夜こそはちゃんとした晩御飯を作るぞと野菜や魚を次々とカゴに入れていく。
レジの列に並んで長いレシートとともにジャラジャラとつり銭を受け取ろうとした時、レジの人の手からぱらりと数枚の硬貨がこぼれ落ちた。
「あ、ごめん」
とっさにこぼれ出た謝罪の言葉。
「いえ」
と、レジの人。
硬貨を取り落としたのはレジの人で、私は受け取る手すら出していないので、別に私が謝る理由はかけらも無いのに、なんで先に「ごめん」の言葉が出てしまったのだろう。反射的にかえってきた「いえ」の返事も考えてみれば変だ。「すみません」をいうのは、取り落とした彼女のほうだ。
なんだか「ごめん」を一回分、損した気分。
かといって、改めて正すほどの事でもないので、なにごともなくつり銭を受け取ってレジを出た。

ほんの些細な一こまだけれど、後からつらつら考えてみると、近頃私は何度も無駄に謝ってきたような気がする。
広報の仕事が押し迫ってきて、原稿の編集や校正をめぐって、「お手数かけて悪いけど、書き直してくださる?」「せっかくやってくれたのにごめんね。なおさせてね。」と各委員さんたちとのメールのやり取りが続いた。
「悪いけどアプコの迎えに間に合わないんだ。行ってくれる?」「急な用件が出来て買い物が出来なかったよ。ばんごはん、ショボくてごめんね。」と家族に言い訳する事も多かった。
「こうして欲しい」と面と向かって言う代わりに、「悪いけど・・・」「ごめんね・・・」を枕詞にして、やわらかくお願いしているつもりになっている自分に気付いてちょっとイヤになる。
その言葉の裏側には、「こんなに頑張っている私」とか「こんなに回りに気遣っている私」の意識があるようで、当然相手が「イエス」といってくれることを期待しているような気持ち悪さがある。
そこには、「ごめんね」の言葉が持つ本来の謝罪の気持ちや心遣いの気持ちが見えなくなっていたのではないだろうか。

たとえば「すみません」という言葉を、本来の謝罪の意味ではなく、「ちょっと、○○さん」というような呼びかけの意味で使うことがある。
時には「ごめんなさい」や「ありがとう」の代わりに使うこともある。
相手の名前や行為、自分の気持ち等に直接的に触れることなく思いを伝える便利な言葉としての「すみません」という語を使う。その曖昧さがなんとなくイヤになって、「すみません」という言葉を避けた事があった。
嬉しかったときには「ありがとう」と、申し訳ないと思ったら「ごめんなさい」と、はっきりと気持ちを表す言葉を選んで使うようにしたいと思ったのだ。
それなのに今、忙しさに甘え、人間関係のトラブルを慎重に避けるためだけに、必要以上に乱発して「いい人」になった気になって使う「ごめんね・・・」「悪いけど・・・」という枕詞のイヤラシさはどうだ。
自分では触れてすらいない硬貨の散乱に何のためらいも無く、習慣のようにとりあえず「ごめんね」という言葉を使っておく安直さが、ますます鼻について自分がいやになる。
本当に「ごめんね」といわなければならなくなった時、使い古されてぺらぺらになった「ごめんね」に本当に心を表す深い意味をこめる事が出来るだろうか。
大量生産でばら撒かれた「ごめんね」の中から、本当に心を込めた真実の「ごめんね」を誰かに見つけてもらうことは出来るだろうか。
そして何よりも、本当に「ごめんね」といわなければならないタイミングを、私自身が見失ったり取りそこなったりする事は無いだろうか。

「無駄に謝る」という変なフレーズが頭に浮かぶ。
それは時には円滑な人間関係を維持するために必要不可欠な処世術でもあるのだけれど、無意識のうちに「とりあえず謝っておく」という安直な逃げ道を選ぶ愚鈍さがイヤだ。
自戒を込めて、改めて心に決める。
意味の無い「ごめん」を乱用しない。
伝えるべき気持ちは、曖昧に濁さない言葉で述べる。
「ごめんね」に甘えない。

園バスから降りてきたアプコがプンプン怒る。
「今日、お弁当にお箸が入ってなかったよ!」
わぁ、ごめん、ごめん。
これはほんとにホントの「ごめん」
お買い得イチゴで御勘弁を・・・。


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