月の輪通信 日々の想い
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2004年11月25日(木) 新鮮

アユコとゲンが珍しく二人そろって帰ってきた。
ちょうど習字に出かけようと車を出したところで、フロントガラスのむこうにゲンの丸っこい笑顔と大人びたアユコのひょろりとした姿が仲良く絡まりながら坂を上ってくるのが見えた。
二人は車を見つけるとニコニコ笑いながら、駆け寄ってくる。
その手には立派な葉付きの大根と丸大根が一本ずつ。
「学級園の野菜、もらってきたよー!」
ゆっさゆっさと手にした野菜を振り回してゲンが笑う。
いい顔してるなぁ。
二人の通う小学校には立派な農園があって、時々こんなふうにびっくりするほど立派なお野菜のおすそ分けを頂いてくる事がある。
自分達が育てた野菜を持ち帰ってくる子ども達の笑顔はとても得意げで、幼いながらも「収穫の喜び」というものを十分に味わわせていただいているのだなぁと、ありがたく思う。
無農薬で育った大根は今にもパチンとはちきれそうなみずみずしさで、ずっしりと重い。
アユコとゲンが頂いた野菜を袋にもいれずにむき出しで抱えて帰ってくるのは、収穫物の立派な作柄が嬉しくてたまらないからかもしれない。

頂いた野菜のみずみずしさを余すことなく味わいたくて、ひとまず大根と丸大根の葉をきれいに洗って、とんとんと刻む。ボールいっぱいの刻んだ青菜をフライパンで炒め、甘辛く煮詰めてゴマを振る。
大根は葉に近いほうを細かく千切りにして塩でもみ、葉っぱも加え重石を乗せて浅漬けにする。
どちらも私が幼い頃、同居していた祖母がよく拵えてくれたお惣菜。
台所でとんとんと青菜を刻んでいた祖母の丸い背中を思い出す。

とんとんと青菜を刻みながら、なぜだか急に祖母の「おくもじ」という言葉を思い出した。
細かく刻んだお漬物の事を祖母は時々「おくもじ」と呼んだ。
漬け物好きの父はそれを「鳥のえさみたい」と笑ったけれど、祖母はいつも刻んだお漬物を白いご飯にぱらぱらまぶして食べるようにと私達に勧めた。
パリッと新鮮な旬の野菜の滋養を残さず孫達に味わわせたいと、細かく刻んでおいてくれたのだろう。
子どもの頃にはさほどありがたいと思うことのなかった「おくもじ」の心遣いを、母となった今、鮮やかに思い出す。
子ども達の持ち帰った大根を、無駄なく美味しく食べさせてやりたいと思うとき、迷わず葉っぱをトントンと刻み始めるのはあの日の祖母の丸い背中の記憶が確かに私の中に根付いているからなのだなぁと思う。

今日、夕食に予定していたのはドライカレー。
外出先から帰って、手早く出来るお急ぎメニュー。
ありゃりゃ、なんだかちぐはぐだねと言いながら、大根葉の炒め物も鉢に移して食卓に上げてみた。
たまねぎにんじん合挽きミンチの甘口ドライカレーに、ためしに大根葉を添えてみる。
・・・意外に合うかも。
とっても邪道な味わい方だけれども・・・。


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