月の輪通信 日々の想い
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休日なので、アユコ、先だってから念願の神戸行き。 加古川のおばあちゃんのお誘いで、北野の異人館街やらショッピングやら一日楽しませてもらった。 時節柄、一人で電車で行かせるのも気持ちが悪いので、こちらからはJRで中間地点の尼崎駅まで送り迎え。加古川からもわざわざ尼崎まで母が迎えに来てくれて、アユコの「おばあちゃん独り占め旅」に出かけていった。
小さい頃から比較的「無欲の人」だったアユコも、最近ようやくお年頃になったか、洋服やアクセサリー、可愛い雑貨など、女の子らしいショッピングの楽しみを覚えはじめたらしい。 ご近所のショッピングセンターの雑貨屋さんだとか、用事で出かけたときの通りすがりの文房具屋さんとか、本当にささやかなウィンドショッピングのチャンスをうきうきと楽しむようになった。 普段アユコと母が出かけるときには、もれなくアプコが付いてくるので、なかなかアユコが満足するまで街歩きを楽しむチャンスは少なく、「これ、買って」のおねだりも憚られる。 そんなアユコにとって、気前のいいおばあちゃんを独り占めにして、たっぷり都会を堪能できるチャンスは本当に嬉しいものだったに違いない。
「いいなぁ、アユコ。おばあちゃんはお母さんのお母さんなんだから、ホントだったらお母さんが一人で神戸へ行っておばあちゃんと遊んでくるのに・・・」 行きの電車の中で、何度もアユコにささやいてみる。 ホントは母だって、たまには懐かしい神戸で一日楽しく遊びたいんだい! 「えーっ、じゃ、お母さんも一緒に神戸行っちゃう?」 困った顔で何度も答えるアユコ。 ダメだよね、家族とはなれて、おばあちゃんと二人だけってのがいいんだよね。 きっとおばあちゃんだって、おばさんになって欲の深くなった娘ではなくて、買い物の楽しみや甘えんぼの喜びに目覚め始めたばかりの若い孫娘とのデートを楽しみにしてくれているに違いない。 いいよいいよ、一人で十分楽しんでおいで。
夕方、再び迎えに行った尼が崎の駅。 アユコはお土産の紙袋を大事に抱えて上気した顔で笑っていた。 ちょっと緊張していた朝とは違って、おばあちゃんのすぐ横に親しげに寄り添っているアユコ、いっぱい甘えさせてもらってきっととても楽しかったに違いない。 帰りの電車の中、「ねぇねぇ、どんなトコ行ったの?お昼、何食べた?いいもの買ってもらった?」と矢継ぎ早に質問する私に、「う〜ん。ひみつ。」とたくさん内緒ごとを作るのも、アユコは面白くてたまらないようだ。 往復一時間半のJR、2往復の送迎で一日をつぶした母としては、ちっとも面白い事はないのだけれど、アユコがキラキラといつもよりハイテンションで笑うので、これはこれでよしとする。 一日アユコに付き合って歩き回り、ずいぶん散財してくれたであろうおばあちゃんにただただ、感謝感謝。
ところで、帰宅したアユコ。 おばあちゃんに買ってもらったというチェックのブラウスを見せてくれるまえにささっと値札を取って小さくちぎって隠した。 「うちでは買ってもらったことのない値段かも・・・」 と微妙な表情。 そりゃそうでしょう、最近我が家の服飾費はぎりぎりいっぱい。一枚500円のTシャツ、1000円のジーンズが定番なんだから。 「それにしてもね、ちょっとすごいのよ。4倍ぐらいするかも・・・」 4倍?何の4倍? ・・・・やっぱりアタシもアユコに付いていけばよかったかも・・・。 お母さんだってまだまだ、お母さんん甘えんぼしたいんだよう。
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