月の輪通信 日々の想い
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TVで「食育」に関する番組を見た。 全国の小学校の給食を試食して歩いているという研究者が、学校給食を通じて見られる子ども達の食の好みの変化について述べておられた。 両親の共働きや外食産業の普及で、子ども達は食べなれたハンバーグやから揚げの味を好み、酢の物や煮物など伝統的な家庭のお惣菜メニューを敬遠しがちだという。 子どものハンバーグ好きも、酢の物嫌いも今に始まった事ではないとも思うが、都会の小学校と田舎の小さな小学校の給食風景を取材して、その食生活の違いを述べておられたのは面白かった。
都会の小学校は生徒数も多い大所帯。 取材の日のメニューはハンバーグだった。 嬉しげにパクパク食べる子ども達に混じって、子どもたちに人気のはずのハンバーグすらお箸でつついて食べようとしない子がいる。好きなメニューでも家庭と調理法が違うと食べられない子もいるのだそうだ。 子どもらの嫌いなお惣菜メニューの日は大量の残飯が出るのだという。 給食室の中は衛生上の理由で、関係者以外立ち入り不可。 大量の食材が一度にワッと調理されているのをガラス越しに撮影していた。春巻きなどの出来合いの半調理品のメニューも利用されていて、人気が高いのだそうだ。 かたや生徒数100人あまりの田舎の小学校。 近所のおじいさんが地元で取れた無農薬の野菜を軽トラックで運びこんでくる。二人の調理員さんが具材を手で混ぜてきのこご飯を作っていた。 田舎の子達は家庭でも煮物や酢の物など、昔ながらの惣菜を食べなれているので、そういうメニューでも比較的残飯も少ないという。 給食のおばさんたちはいつも必ず子どもたちと一緒に給食を食べ、子ども達の好みや食べっぷりを絶えずリサーチしているという。
取材当日のメニュー選択といい、給食室の取材の仕方の違いといい、いかにも作られた比較という感じがして、ちょっとあざとい気もしたが、子ども達の食の好みが家庭で日常食べている物の中から作られていくということには納得がいった。 子ども達は確かに食べなれた味のものを好むし、レトルトや冷凍食品など日本全国共通のお味のメニューは口当たりもよく人気がある。核家族が増え、お子様中心の食卓に、お手軽便利な出来合いメニューがのぼる事も多くなった。 でも、そのことが未来の日本人の食生活の形を大きく変えていくことにつながっていくのだということに改めて気付かされ、愕然とする。
番組に触発された訳でもないけれど、純和食のお惣菜メニュー。 アジの塩焼きに、水菜の煮びたし、豚汁に高野豆腐。 こういうメニューを子ども達はいつも「茶色いご飯」という。 ボリュームのあるファミレスメニューのように「わ、おいしそう!」と飛びつく事はないけれど、年齢を重ねるに連れて自分からお箸をすすめてよく食べるようになってきた。小さい頃から野菜嫌いで偏食の多いオニイでさえ、ずいぶん食のレパートリーが増え、茶色いご飯の時にも「お子様向け」の一皿を追加する必要がなくなってきた。 子ども達に人気のメニューとか、お手軽簡単食べやすい食材に流れるばかりでなく、どこかで我が家の食卓のルールを長年維持していくという事が大事なのだなぁと思う。
6尾の小ぶりなアジは特売にひかれて買い込んだもの。 丸ごとパック詰めされたアジをさばくのが面倒でぐずぐずしていたら、アユコが「私がやる!」と手を上げてくれた。エラとぜいごをとって、ハラワタを抜いてきれいに洗う。最初に1尾手本を見せたら、残りの5匹はきれいにさばいてくれた。 食卓に上った塩焼きを「今日はアユコがさばいてくれたよ。」とすすめると、ほかの子ども達も妙に神妙な顔をして、いつもより慎重に小骨の多い部分の身まできれいにより分けて食べてくれた。 調理する人の心意気というものは、そのまま食卓に着く人の食欲にも通じるのだという事を実感する。 近頃、お料理に目覚めて、「レトルトじゃないほうのミートスパゲッティーが食べたいよ」なんて生意気な指定をするようになったアユコの言動に触発されて、また今日も「食べる」という事に対する主婦の手綱をぎゅっと引き締められた思いがする。
今日もまた勉強させていただきました。
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