月の輪通信 日々の想い
目次|過去|未来
先日アプコ宛に小包が届いた。 加古川のおばあちゃんからのプレゼント。 敬老の日に幼稚園からアプコが出したお手紙のお礼だという。 包みの中から出てくるのは、わっさわっさと大量のチョコレート。 きれいな化粧箱に詰められた専門店の高級チョコレートではない。 スーパーで普通に積まれている小箱入りのチョコレート。 栗のはいったの、イチゴのはいったの、TVのキャラクターのかたちをしたの・・・・。 普段、「しょうがないわねぇ、一つだけよ。」ともったいぶって買ってもらうチョコレートが次から次へとこぼれ出てくる。 アプコ、大喜び。 お店屋さんの店先のように、テーブルの上にずらりと並べてアプコしばしうっとり。 抱えきれないほどのたくさんのチョコレートを自分の名前宛の小包で受け取って、独り占めできる嬉しさ。 これってまるでお姫様気分。
「アプコちゃんからみんなにも分けてあげてね。」 お礼の電話をすると、おばあちゃんがそっと付け加えてくれた。 ニコニコしながらこっくり頷くアプコ。 電話なんだから、声だして返事しないと聞こえないってば。 とってもとっても嬉しいくせになかなか「ありがとう」の声が出ないアプコ。 このニコニコ顔をそのままTV電話でおばあちゃんに送ってあげたいなと思うのだけれど・・・。
「ねぇねぇアプコ、一つ頂戴。」 たちまち、オニイ、オネエが寄ってくる。 「ウンいいよ。」と、アプコが自分で選んだ一箱をあける。 父さん母さんにも配ると、ほんの一粒二粒が自分の口に入るだけ。 「じゃぁ、もう一箱」と、別の種類の箱をあける。 みんなに配るといろんな味が食べられるねとアプコが笑う。 そうだね、家族が多いと一箱からはほんの一つか二つしか食べられないけれど、次の箱を開けて新しい味を食べる事も出来るよ。 よかったね。
「おかあさん、これぜーんぶちゃんとしまっておいてね。」 アプコの思いを通すと、我が家の冷蔵庫はとりどりのチョコレートの箱で満員になる。 「アプコ、あれ食べようよ。」 お兄ちゃん、お姉ちゃん達もいちいちアプコにお伺いを立てる。 そのたびに嬉しそうにアプコは惜しげなくチョコレートを配る。 なんたって、冷蔵庫にはまだまだあんなにいっぱいチョコレートはある。 たくさん持ってるものを人に分け与えるのは楽しい事だ。 たくさんたくさん持っている時には・・・。
園バスから降りてきて、アプコはアンパンマンのチョコレートをお友達のKちゃんに分ける。 小さな個包装をチョコレートをきれいな模様付きの袋にアプコが自分で詰めかえてプレゼント。 「あと二つぐらい入れようね。」 ここでもアプコはとっても気前がいい。 ぎゅうっとつめて、ハイッと渡す。 「Kちゃん、うれしそうだったね。『あと二つ』って入れてあげてよかったね。」 帰りの車の中で、楽しそうに笑うアプコ。 さっそく封をあけたアンパンマンチョコレートの甘い匂いが車の中に拡がった。
末っ子姫のアプコは、いつだってお兄ちゃんお姉ちゃんから最優先でいいものをもらえるから、自分の物を人に分け与える事に躊躇をしない。 「○○をあげたら、とっても嬉しそうだったね。よかったね。」 と、分け与える事の嬉しさをちゃんと知ってる。 甘えた放題のわがまま姫だけれど、自分がたくさんたくさんいいものを持っていてこそ、「分け与える喜び」とか「喜んでもらえる楽しさ」をいつのまにか心の中に育てていたんだなぁ。
「人に与える喜び」というのは、自分自身がたっぷりと与えられて、満たされていてこそ学ぶ事の出来る、贅沢な資質なのかもしれない。 愛情とか、才能とか、そういうものも・・・。
|