月の輪通信 日々の想い
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2004年09月21日(火) 教訓

昨日、大騒ぎしたゲンとオニイの失くし物。
ありました。
朝から父さんが「ダメでもともと」ともう一度電話をかけなおしてくれた試合会場の体育館。
昨日のうちに、子ども達が失くしたリュックはどなたかに届けていただいた様子。
父さんが早速車で、受け取りに行ってくれる。
どういう経緯で何処で見つけてくださったのかは不明だが、とりあえずゲンの剣道着もオニイの私服も、空っぽの弁当箱も無事納まったままリュックは帰ってきた。
心配していたオニイの全財産の入った財布ももちろんそのまま入っている。
一度はあきらめた荷物だが、無事戻ってきて、ホッと一息。
落し物のリュックをそっくりそのまま届けて置いてくださった親切などなたかに感謝感謝。
世の中まだまだ、捨てたもんじゃないねなんて、嬉しくなる。

汗をかいたまま丸めて突っ込まれたゲンの剣道着と空の弁当箱。
一晩置くとさすがに、臭う。
も、もしかして、この悪臭に魔よけ効果があったとか?
いやいや、とりあえずお洗濯、お洗濯。

「ところで、オニイ、今回の教訓は?」
戻ってきたリュックを見て、ようやく表情がほころんだオニイに問う。
「ゲンのことは当てにしない」
きっぱり断言。
「そうじゃないやろ、オニイ。あんたはもう中学生。4年生のゲンに荷物を預けてぼーっとしていたあんたは確かによくない。
でも、そのことの教訓は『ゲンはあてにならない』じゃなくて、『自分のことは自分でしっかり管理する』ではないのかな?
昨日の君は朝から袴の裾のほころびにも気付かないまま出かけたじゃないの。
そこんとこからすでに、君の失敗は始まっていたんじゃないの?」
ホッとしたついでに、日頃から気になっているオニイの自己管理の甘さを懇々とお説教。
オニイ、しゅんとしてうな垂れて聴く。
一度はあきらめた、なけなしの小遣いも帰ってきた事だ。
ここは、一つ我慢して聞け。

「ゲン、あんたの教訓は?」
「人の荷物は持たない」
・・・・ちょっと違う。

本当はもう一つ。
父と母が昨晩話し合ったもう一つの教訓。
とっても困った事や、大失敗が起こってしまったとき、オニイとゲンの対処の仕方には大きな違いがある。
荷物が先生の車にも駐車場にもなくて、もう諦めざるを得ない状況になったとき、子ども達はうろたえ、凹み、自己嫌悪に陥った。
オニイは拳で自分の頭を叩き、憂鬱な顔でうろうろと歩き回り、母や妹たちが声をかけると烈火のことく「うるさい!」と怒った。
ゲンは、きゅっと眉根をしかめて、唇を噛み締め、ただただ「ごめん」と繰り返した。
どよ〜んと沈み込んだ家の中の空気に、
「なくなったものは仕方がない。諦めて何か方法を考えよう。とりあえず新しいリュックとお弁当箱でも買おうかね。」
「さ、みんなくたびれたから、さっさとお風呂に入って寝ちゃおうよ」
と、父や母が提案する。
ホッとしたように、素直に表情を緩めたゲン。
ますます、イライラを募らせてプイとふくれたオニイ。
年齢や、失ったものの違いはあるとはいえ、オニイとゲンの気分の変え方には大きな違いがある。

困った事態に陥ったとき、
どんどん自己嫌悪の渦に沈んでいってしまいがちなオニイと、きっかけを見つけてふいと気分を変えようと試みる事の出来るゲン。
どちらかと言うとオニイの生真面目さは父親譲り、「おいしいものでも食べてとりあえず寝ちゃおう」と思うゲンのお気楽さは母親譲り。
どちらも親にそっくりの生まれもっての性格だから、どうする事も出来ないけれど、オニイのどんどん自分を追い詰めていく深刻さは彼自身だけではなく周囲のものにも重苦しくて辛い。
自己嫌悪と言いながら、もてあました感情を周りの誰かにぶつけたり、どんどん一人で沈んでいくわなをこれからオニイはどんな風に克服していくだろうか。
一方、外見上えいっと気分を切り替えて、失敗をなかったことのように振舞おうとするゲン。
それはそれで痛々しくもあるのだが、まだまだうっと惜しい気持ちを引きずっているオニイや周りの者にとって見れば、ゲンの変わり身の速さはそれはそれでカチンとくる。本人だって決してけろりと忘れられるわけでもないのだけれど、へらへら笑って平気を装うゲンにますますいらだつオニイの怒り。

難しいなぁ。
これからまだまだ何度も何度も訪れるであろう人生の大失敗に、どんな顔をして立ち向かっていけるのか。
いつまでも引きずるオニイに、イライラする私。
けろっと平気な顔をしてみせるゲンに、ぐっと拳を固めてしまう父さん。
お互いにわが身を振り返って、自分にそっくりな息子にイラついたり、自分にないものを持つ息子を疎ましく思ったり・・・。
それはすなわち、同じような場面に立ったときの自分自身の反応を振り返る事。

父や母にも、いろんな教訓を運んでくれたゲンとオニイの失くし物の顛末は以上の通り。
お騒がせした皆様、ごめんなさいでした。


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