月の輪通信 日々の想い
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夏休み第一日目。 午前中小学校での陶芸の講座で、駆けずり回る。 今年の題材は、「はと笛を作ろう」 昨年の「土鈴を作ろう」より格段に難しいので、5、6年生対象で人数も少なめに抑えてもらった。 それでも、吹き口部分をうまく調整してこしらえるのはとても難しくて、結果的に時間内にポーとなったのは約3割。 残りは、工房へ持ち帰って父さんの内職作業となった。 嗚呼!
続いて、夕方から、アプコお泊り保育。 アプコの通う園では毎年、年長子どもたちが夏休みの最初に、園でお泊りを経験させてもらう。 夕方5時前に園に送り届け、夕食のカレーを食べさせてもらい、園庭でキャンプファイヤーや花火をして、保育室で雑魚寝。 翌朝には朝食をいただいて、8時にはお迎え。 ビジネスホテルの「朝食つき」並みのスケジュール。 とはいえ、家族と離れて、友達や先生たちとお泊りするのははじめてという子が大多数。
我が家の甘えん坊ももちろんお泊りは初めて。 「花火、するんだって!」「ひまわり組のお部屋で寝るんだよ。」とずいぶん前から楽しみにしていた。 新しいパジャマを買い、ベビー布団におニューのカバーをかけ、イチゴ味の子ども歯磨きを用意する。 兄弟のなかでは少し年の離れた末っ子として甘えん坊で過ごして居るアプコ。「大丈夫かなぁ・・・」と、同じようにお泊り保育を経験してきた兄弟たちが、首をかしげる。父さん母さんのほかに、アプコには心配性の乳母さんたちが3人も居る。 「いいよな、アプコはお泊りができて・・・。」 というのはオニイ。 彼が年長の時には、ちょうどO-157が発生したばかりの時期で、お泊り保育は急遽中止になり、唯一園でのお泊りを経験していない。中二にもなって、何を今頃・・・とも思うが、ほかの兄弟たちが普通に通過してきた行事をちゃんと経験できなかったという口惜しさはやはり後まで残るのか・・・。
「今頃、キャンプファイヤー、してるかな。」 「そろそろ花火の時間かな。」 たった数時間の不在なのに、オニイ、オネエはすでににぎやかなアプコの声が聞こえないのが物足りないようす。 確かにちびっ子アプコが一人抜けただけで、夕食の席はちょっと静かな大人の食卓。「お茶、入れてください!」「おしょうゆ取ってください!」と何かと人の手を借りようとする甘えん坊を、普段うるさいなぁと思いつつ、やはり小さいアプコなしでは、なんだかさびしい。 「ちゃんとおしっこしてから寝たかなぁ。」 と気にしつつ、いつもより少し広々した雑魚寝の寝床に子どもたちは あがっていった。
・・・と、思ったら10時過ぎになって、園から電話。 「あのー、アプコちゃん、少しお熱があって・・・。」 ありゃりゃ、アプコ、お持ち帰りだ。 化粧を落とした顔のまま、車で園まで迎えに行く。 お布団も歯ブラシも早々に引き取って、かえって来た。 「ま、いいですね、カレーも食べたし、ファイヤーも花火も見せてもらったし、おいしいところは全部おさえたから、さっさと連れて帰りますワ」 というと、担任の先生と園長先生がアハハと笑っておられた。 冷却シートをおでこに張ってもらってしょぼんとしていたアプコも、車に乗り込むなり恐ろしい勢いでしゃべりはじめた。 お友達とやったゲームのこと、着ぐるみのドラえもんや先生が扮装したハリーポッターのこと、カレーがあまり辛くなかったこと。 さぞかし、楽しくて楽しくて、楽し過ぎて興奮して熱が上がってしまったものだろう。
帰宅すると、もう寝ていたはずのアユコが下りてきた。 「アプコ、おいで、一緒に寝よ。」 お泊り中途退場で、アプコがへこんでいるかもと思いやってくれたらしい。 ちっともへこんでいないアプコは嬉々として寝間へあがる。 アプコの自立の日は、まだ遠いのかもしれない。 お姉ちゃんお兄ちゃんたちに、小さい愛玩動物のようにかわいがられる甘えん坊のアプコが、まだまだ我が家には必要でもある。 寝苦しさに転々と寝返りを繰り返して、ごちゃごちゃともつれ合って雑魚寝する子どもたちのいとおしさ。 もうちょっとこのままがいいなぁと、笑ってしまった。
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