月の輪通信 日々の想い
目次|過去|未来
2004年07月18日(日) |
ガラガラヘビがやって来た?! |
ゲンの同志(導師?)でもあるお向かいのMさんが、大ニュースを教えてくれた。 我が家の裏を流れている尺治川の堰堤付近で、ガラガラヘビを見たという。 犬の散歩の途中、見かけたというそのヘビは、よくいるシマヘビや青大将とは明らかに違って鎌首を持ち上げ、膨らんだ尻尾が威嚇のためにガラガラとなっていたというのである。 その堰堤は我が家からほんの数十メートルのところにあり、ゲンの虫取りポイントのすぐ近くでもある。 ほんとだったら怖いなと思いつつ、なんだかちょっと可笑しい。 さすが、Mさん。 持ち込んでくるニュースがいかにも突飛で、「ホントかな?」と思いつつ、ご本人は大真面目。まんざら「うそでしょ?」とも思えない。
里山の管理人を自認するMさん、さっそく役所やらご近所さんやらにガラガラヘビ出没情報を触れ回る。 近所の市議さんもやってきて、警告の看板を作ろうか、ロープを張って付近を立ち入り禁止にしようかと相談。 季節柄、このあたりの川にはハイカーや水遊びの家族連れがたくさんやってくる。 もとよりマムシやムカデの危険もあり、地元の人ならそれなりの装備で入り込むような水辺の草むらにも、ハイカーは短いズボンやビーチサンダルの軽装でジャブジャブと踏み込んでいく。 先週は、現場のすぐ近くで、YMCAだかボーイスカウトだかの団体が小さい子らを引き連れて川伝いに上流へ行列していた。 夏場のヘビは、草むらの地面ではなく、川沿いに覆いかぶさったような草のかげなどによくいるのだそうだ。 だから夏場の田んぼのあぜを歩く農家の人は、必ずゴム長靴をはいて、水辺の草には近寄らない。 地の人の危険情報、安全意識は、確実で適切だ。逆らわないに越したことはない。 外からやってきて、にわかアウトドアを楽しむ人たちの危機感の無さは、お話にならない。 以前から気になっていたのだけれど、アウトドアのスペシャリストに違いない○○○スカウトの人たちが山へ入るときの制服は、なぜわざわざ半袖、半ズボンなのだろう。 彼らの自然愛好の精神はどこか信用がならないと、常々感じている。
・・・で、ガラガラヘビに話は戻る。 ほんとにガラガラヘビなんだろうか。 だとしたら、誰かが飼えなくなったペットでも捨てに来たのだろうか。 今日、来た市議さんの話では、最近、市内で大きな「かみつき亀」も捕獲されたのだという。これも在来種ではないので、誰かがペットを捨てたものだろう。 つがいで放されたものでなければ、そのうち一代限りで絶えてくれればよいものだけれど、それにしても迷惑な話である。 どこからか危険動物をわざわざ買ってきて、飼えなくなったら山に捨てる。 誰かの身勝手が、地元の人間にも当の動物にとっても大迷惑。
とはいえ、話はガラガラヘビ。 「ホントだったら怖いね。」といいつつも、「うそでしょ、まさか・・・」のにおいがいつまでも抜けなくて、大真面目に心配しながらも後でくすっと笑ってしまいそうになる。 「ワシ、犬を2匹もつれとったから、どないもでけへんかったけど、あれは絶対ガラガラヘビや。 とぐろまいとる尻尾がガラガラいうとったしな。」 つばを飛ばし、熱心に語るMさんの表情は真剣で、決してうそとは思えない。 実際Mさんは地元の山のことには詳しくて、これまでにも行き倒れの人だの小さな土砂崩れの箇所だの、近所で起こる小さな事件をいくつも見つけては通報しておられる。 それだけに「またMさん話ね。」と笑ってしまいながらも、どこかで一目置かれている。こういう人の情報って、結構貴重だなと思う。 とりあえず、虫取りに夢中のゲンには、危険な場所に近寄らないようによく言っておかなければ・・・。 Mさんを虫取りの師匠と仰ぐゲンのことだ。 きっと注意して、行動するだろう。
ところで、Mさんのような地の人の話やお年寄りの話を聞いていて、よく感じること。 ・主語が無い。 ・昨日のことと十年前のことの区別が無い。 ・自分自身が見たことと人から伝え聞いたこととの区別が無い。 だから、はいはいと相槌を打ちながらも、どこかで首を傾げたり、ふんふんと聞き流したりしてしまうことも多い。 その辺のところは、幼い子供たちの語る「大ニュース」に近いものがある。 だからこそ、「ガラガラヘビ」なんていう突飛な話題が出てくると「怖いな」と思いつつ、なんか楽しくなっちゃったりするのだけれど・・・。 地に足を着け、毎日自然を身近な物として感じている人たちの実感というのは、どこかファンタジーに満ちているようで、しかもリアルな現実でもある。 「大地の力」とでもいう様なゆるぎない現実感に、かすかに混じるユーモアのにおい。 そのことの可笑しみが、何とはなしに嬉しくて、 私はガラガラヘビ話にちょっと夢中である。 もしかして、絶対危険じゃなかったら、近所の河原でとぐろをまく、本物のガラガラヘビの「ガラガラ」と鳴る威嚇の姿を、間近にこの目で見てみたいと本気で思ってみたりする。 私もすっかり「地元のおばちゃん」になっちまったもんである。
|