月の輪通信 日々の想い
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父さんの個展やら、七宝やら、オニイの宿泊学習の準備やら、ばたばたと東奔西走。幼稚園の送り迎えの合間を縫って、出たり入ったり。 この先もまだまだ、剣道の試合やら,PTAの会議やらでうちでまったり専業主婦を楽しむ暇がない。 オニイが復活してくれていて、本当に助かった。 とりあえず、息を切らして走りまわれば用事はひとつずつ片付いていく。
・・・と思っていたら、今朝はアユコがぐずぐずしている。 皆が朝の支度で大忙しの中、なんとなくうだうだとご機嫌が悪く、いっこうに急ごうとしない。 なんなの、なんなのと聴くと、「学校へ行きたくない」という。 あらら、今度はまたアユコかい。 次から次へと降って沸く難題に、母、へらへらと笑ってしまう。 6年生になって、今年新しく出来たばかりの放送委員会の副委員長になったと張りきっていたアユコ。毎日毎日が楽しそうで、妙にテンションが高かった。 オニイの不登校騒ぎを心配そうに見守り、ともすれば暗くなりがちな母と兄に陽気に軽口を叩いて、エールを送ってくれていた。 「この頃のアユコは、絶好調だね。」と笑っていたが、彼女には彼女のしんどい事がまだまだ残っているのだろう。
とにかく他の子ども達を送り出し、ゆっくりとアユコの話を聴く。 クラスで何人かの男の子達から、いやなことを言われたり、小さな悪戯をいくつか仕掛けられているという。 首謀者は5年の時のメール事件の中の一人I君。 「ごめんなさい、もうしません」と何度も謝りながら、「結局あいつは変わらない」とアユコは唇を噛む。 先生がきつく叱っても、アユコが毅然と無視しても、「あいつは口先で謝るばかりで、また翌日には同じ事をする。」 あの事件以降にもあちこちからI君の素行について、よくない話もいくつか聞いている。「どうしようもないなぁ」と思う。 近所の小うるさいおばさんやら、生真面目な小学生の女の子が、意見したり訴えたりして変わる子じゃない。変わる家庭じゃない。
よっしゃ、今日はズル休みだ。 担任の先生に事情を話して、すっぱり気分転換して作戦を考えよう。 外は素晴らしい好天気。 軽乗用車をぶんぶん走らせて、街にショッピングに出かける。 「アユコと二人で買い物に行けるのは久しぶり!うれしいなぁ。」 親公認とはいえ,「ズル休み」にびくびくしている生真面目なアユコ。 それでもここ何日か、父さんの仕事の事やら、オニイの事やらでちょっと居心地の悪い思いをしていただろうアユコが、少しづつ「母独占」を楽しみはじめているのがわかる。 手芸店で小物をいくつか買い、バーゲンのTシャツを選び、好きなお菓子を買う。 パン屋さんのスタンドでサンドイッチとジュースのささやかな外食を楽しむ。 一人っ子ならごくごく当たり前のささやかなショッピングの1日が、アユコにとっては滅多にない楽しい休息の時間なのだなぁ。
甘い甘い菓子パンを齧って笑うアユコに、 「また明日から闘うエネルギーを補給できた?」と聞いてみる。 「うん、大丈夫。」 強くなったなぁ、アユコ。 近頃では、もう自家中毒の発作も偏頭痛も起こらなくなった。 ちょびっと泣いて、美味しいものを食べて、「仕方ないジャン。」と再び立ちあがる。そういう戦い方が出来るようになった。
楽しいズル休みだったよ、アユコ。 お陰であなただけではなく、お母さんもたっぷり充電できたよ。 さあ、一緒に明日の戦い方を考えよう。 月の輪通信
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