月の輪通信 日々の想い
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2004年04月01日(木) 壊す仕事

オニイの陶芸修行第2弾

「今日の仕事はちょっとなぁ」
父さんが窯場の隅で、ぶつくさ言っている。
「オニイに手頃な仕事があるんだけど、どう思う?」
聞くと、古い作品を砕いて処理する仕事だという。
通常、素焼きの段階で利用できなくなったものは、土場で砕いて新しい土作りの原料として再利用する。
そして、本焼まで済んだ段階で、瑕や形のゆがみで表に出せない作品は、窯場の隅に置いてあってまとまった数になると砕いて廃棄処分にする。
こちらは再利用は出来ない。
いわゆる「焼き損じ」は、商品としてはもちろん、内使いとしても外には出ないように慎重に扱う。
結果、壊すには惜しいような作品も惜しげなく壊す。
惜しげなくといいながら、やはり作ったものを自ら壊すのは辛い。
いつもこつこつ型抜き仕事を担当している従業員のHくんに任せるのも気が引ける。
「ちょうどいいじゃん、それ、オニイ向きの仕事だよ。」
さっそく、オニイを呼んでくる。

「えーっ、ほんとに全部割っちゃうの?」
防塵メガネに軍手で装備したオニイ、父さんが引っ張り出してくるお皿や香合を目を丸くして眺めている。
窯元としての品質を守るために、あえて破砕しなければならない理由をオニイにも説明する。
「これは?」
オニイが拾い上げたのは、松ぼっくりの形の香合のふたの部分。
これ自体には瑕はないけど、身の部分が問題ありで使えない。あわせの部分は両方同時に制作しないときちんと合わないので、ふただけ再利用することは出来ない。
瑕やゆがみはないように見えても、やはり何らかの理由で使えないものばかり。
かなづちでひとつずつ細かく砕いて、セメント袋にザラザラと集める。
心痛む仕事は息子に任せて、父さんはみないふり。
しばらく、カツンカツンと陶器を砕く音が静かに工房に響いていた。

「今日はここまでにしとくわ。」
ほこりまみれの軍手を外しながら、オニイが仕事を中断。
仕事の半分を明日に残して、本日は店じまい。
「あっさり、帰っていきよったな。」
壊す仕事は、ストレス解消になりそうな気もするけれど、やはりどこかで心が疲れる。
長く続けて楽しい仕事とは思えない。
けれども、これも大事な窯元の仕事。
肝に銘じて、明日もがんばってもらいたい。


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