月の輪通信 日々の想い
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朝、小学生組が一番に玄関を飛び出して行った。 少し遅れて、家を出る自転車通学のオニイ、 「母さん、傘、いるかなぁ。」 「小学生組には、『いらないんじゃない』といっちゃったけど、なんか曇ってるね。」 「どれどれ。」とオニイがそばにあった朝刊の天気予報をささっと読んだ。 「あ、母さん、あかんわ。昼からずーっと雨マークや。」
しょうがないなぁ、傘もって追いかけるか。 傘がいらないと言った手前、傘なしってのもかわいそうで、こんなときは車でびゅ〜んと追いかけるのがいつもパターン。 と、思っていたら、 「じゃ、僕がもっていくわ。」 思いがけず、オニイが申し出てくれた。 「自転車だから、すぐ、追いつくと思うよ。」 「なんで?」 小学生時代のオニイに、何度も慌てて忘れ物を届けに車を走らせた記憶も新しい。そのオニイにゲンやアユコの傘を持って追いかけてもらうことは、ちょっと思いつかなかったので、ちょっと間の抜けた返事をしてしまった。 「いやぁ、別に、わざわざ車出すこともないし・・・」 当然のように答えるオニイが妙に頼もしくてとてもとても嬉しくなった。
「3本も傘もって、大丈夫?」 「大丈夫。大丈夫。」 自転車の乗り方がへたくそで、中学入学当初はずいぶんはらはらした自転車通学。 一年たって、足腰もずいぶん頑丈になり、おんぼろママチャリを飛ばす姿もさまになってきた。 自分の分の傘をサドルの後ろにぐいと差し込み、弟妹二人分の傘を手に軽快に坂道を下っていく。
アニキだなぁ。 かっこいいなぁ。 急に背丈が伸び、少しづつ声変わりが始まり、鼻の下のうぶ毛が急に濃くなり始めた。 少年らしく、自分の周囲のことをあまり母には語りたがらなくなったオニイは、私の知らないところで優しく強く成長している。 こうして男になっていくんだなぁ。 びゅうんと自転車を飛ばして、若い小鳥のように飛び立っていく中学生の背中がまぶしくて嬉しい朝だった。
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