月の輪通信 日々の想い
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「おかあさん、歩いてたら靴ン中にでっかい石が入ってきたよ。」 ゲンが帰ってくるなり、報告してきた。 なに言ってるの、この子は・・・と、ゲンの運動靴を見たら、靴底に十円玉大の大穴が開いている。 「ありゃぁ、見事に穴あいたねぇ。」 靴の中にはもともと厚めの中敷が入っているので、本人も穴が開くまで靴が磨り減っていることに気づかなかったらしい。 確かに毎日山道を元気に登下校する腕白盛りのゲン、靴の減りも早かろう。 でも、いまどき一足のくつを穴があくまで履きつぶす子供ってなぁ。 早めに気づいてやれなかった母のうっかりぶりにも反省。 なんだかちょっとかわいそうになっちゃって、「よっしゃ、さらっぴんの靴を買おう!」とゲンをつれて買い物に出た。
スーパーの靴売り場で最初に物色するのは「1000円均一」のワゴンの靴。 これが我が家の(特に男の子達)の定番になっている。 サイズやデザインが合えばお買い得。 なければ少しづつ値段のランクを上げる。 母が何も言わずとも、お安い方から気に入った靴を探すゲンは賢い。 2件の靴屋を行ったりきたりして、そこそこ気に入った靴を選んで、お支払い。 そんな安物の運動靴でも、おニューの靴のワクワクできるゲンは「子沢山」の子の資格十分。「かわいそう」なんて言わないで。 いっぱい歩いたね、いっぱい走ったね。 穴があくまで一足の靴を大事にはけて、よかったね。 そういってほめてやれるのが、今の幸せ。
ところで、同じ靴売り場でローラーつきシューズというのが安売りになっていた。田舎のスーパーでもワゴンセールになっているところを見ると、流行もそろそろ下火なのか。 スーパーとかで時々妙な動き方をする小学生を見かけて、「あ、あれね。」と思っていたけれど、それにしても、セールになっているとはいえ、結構お高いのね。 田舎の小さな町のゆえ、あのシューズで滑らかに滑れる場所といえば数件ある小さなスーパーのフロアか公共施設のささやかな廊下くらい。 そのスーパーでさえ、「危険防止のため、ローラーシューズでの滑走はご遠慮ください。」と書いてある。 いったいどこで遊ぶためのあのお値段なのだろう。 別にスーパーでぶつかられたとか、事故の現場に行き会ったというわけでもないので、私が怒ることでもないんだけど、「ご遠慮ください」という場所でしか使えない高価なおもちゃを買い与える親の心境ってどういうものなんだろう。
仮に「ローラーシューズを買って」といわれても、 「高いから駄目!」と、即答できる我が家はしあわせである。 子供がどうしても欲しいとねだるとき、買える余裕があるのに「我慢しなさい。」と納得させるのは、心情的にも難しい。 子供に大人顔負けの高価な衣類を買い与える。 子供が辟易するほどたくさんのお稽古事にお金をかける。 子供が少なければできてしまうかもしれない親の自己満足を、「そんなもの4人分も買えないわよ」と言い訳してきっぱりと避けることができるのは、 子沢山の幸せの一つだと私は思う。
一足1000円の靴でいい。 たくさん歩いて、たくさん走って、たくさんの人やたくさんのものに出会って欲しい。 元気のゲンちゃんの靴は22センチ。 母さんの靴のサイズを越すのもあと、ひとサイズかふたサイズ。 母さんが出会わなかったもの、経験しなかったことをたくさん見つけてくるといい。
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