月の輪通信 日々の想い
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一年間つとめてきた子ども会の役員の引継ぎの集まりに出てきた。 4月のお楽しみ会に始まり、夏祭り、秋祭り、クリスマス会やら各種のスポーツ大会。 その企画や運営に奔走してきた15年度の役員もようやく大任を終えて次年度の役員さんたちにバトンを渡す。 去年「えらい役が回ってきたらどうしよう」と不安な面持ちで役職きめのくじを引いた16人が、一年の活動を終え仲のよい、スポーツチームのように互いの労をねぎらい、握手をして解散する。 とてもとても大変なお役目ではあったけれど、地域のこと、学校のこと、子供達のことなど本当にいろんな経験をさせてもらった。
わが地区では「ここの子ども会の役を経験したら、学校のPTAだろうが自治会の役だろうが、なんだって平気になる。」といわれるほど、子ども会役員の負担は大きい。 しかも子供の人数が減ってきている現在では、一家庭に一度は必ず子ども会の役が回ってくることになっている。 仕事を持つお母さんや幼児や年配者を抱えたおうちなど、役員を出すことがむずかしい家も多くて、役員選びにはどの地区も苦労する。 それでも「子ども会なんていらない」という声が上がらずに存続しているのは、学校や地域ぐるみで子供達に楽しい経験をさせてやろう助けてくださる空気があるからだろうと思う。
昔からの古いおうちの年配の方達が、子供達に伝統の祭囃子を教え、消防団のおっちゃんたちがお祭りの夜店で格安の焼きそばを子供達に振舞ってくださる。学校の授業でも地域の方々が教室を訪れ、農業の技や昔の遊び、専門の技術や地域の昔話を子供達に語る。 そんな風にして子供達は地域の大人達に見守られて大きくなっていく。 「社会全体で子育てをささえる。」 というような大仰なものではない。 ムラのこどもたちをたのしませてやりたいという長老達の素朴な手助けがあることを、私はこの一年の経験から改めて感じることができた。
「稽古事で忙しいから、子ども会には入りません。」 「ムラのしがらみに絡まっちゃうのがいやなのよ。」 と、子ども会入会を嫌がる人もたまにいる。 「お祭りには参加したいけど、役員はねぇ・・・。」 と、退会を申し出る人もいる。 子育てをめぐって周囲の人の協力が得られない、学校や家庭に次代を育てる責務が偏りすぎているといわれることも多いけれど、 社会からさしのべられる支援の手に対して、家庭の方からその戸口を閉ざして孤立した育児に追い込まれていくことも多いのではないかと思う。 「お祭りも、クリスマス会も、うちで別に経験させるからいいのよ。」 「仕事が忙しいし、よその子達のために役員をする余裕はないわ。」 子供が社会と関わっていく経験を、地域や学校と離れたところで「個人単位」でまかなってしまうほうが楽だという風潮。 これは子育て現役世代が少なからず抱えている悪しき「個人主義」の産物だなぁと思う。
「めちゃくちゃ、しんどかったけど楽しかったねぇ。」 一年間の活動を終えて、自分達の住む地域に15人の友達ができた。 うちの子のため、うちの家族のためではない奉仕の一年が与えてくれたもの。 おそらくはずっとこの町で生きていく私に、与えられた褒美は大きいと思う。
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