月の輪通信 日々の想い
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2004年03月02日(火) プロの厳しさ

この間の日曜日のこと。
子供達を父さんのワゴンに詰め込んで、
本屋やらディスカウントスーパーやらを気まぐれにめぐる怠惰な休日をすごす。
スタートが中途半端な時間にずれ込んだので、久しぶりにチープなファミレスでお昼ご飯。それぞれに好みのメニューを選んで、満足げにモリモリ食べる子供達。
子供の数が多くなって、「外食でもするか」というとファミレスやファーストフード店での食事がメインとなった我が家だが、それでもそこそこ興奮して「おいしいね。」と充足して楽しめるのは「みんなで一緒」の効用だろうか。
ちゃんとしたお店での特別の一皿を味わう経験もそろそろ必要な年齢にさしかかる子もいるとは思うが、我が家の経済状態を考慮すると「一緒がご馳走」で満ち足りてくれる今の幸せ。

ご機嫌よく食事を終えた父さんのお皿のすみに一片の食べ残し。
いつもきれいに食べ残しを作らない父さんが珍しいなと思ったら、食べ残しではなくて、小さなビニルのかけらだった。
「きっとレトルトかなんかの切れ端ねぇ。いやぁね。」
どうする?とちょっと顔を見合わせてから、やっぱりねとお店の人を呼ぶ。
「こんなものが入ってたんだけど。」
と店長らしき人に言ったら、「あ、何かの包材の一部ですね、申し訳ありません。」とあっさり言って、お皿を下げた。
「あらま、あっさりしたものね。」
と、首を傾げていたら再び店長さん登場。
「大変失礼しました。この商品の分はお代は結構ですから・・・。」
と、伝票になにかささっと書き加えてくれた。
「そうですね。」
数百円のことながら、「悪いな」と言うような、「ちょっと得をした」というような、「当然よ」というような。
とりあえず皆おなかいっぱいでご機嫌よく食事を終えたので、よしよしということで店を出る。

その一部始終を一言も口を挟まず見ていた子供達。
車に戻ってオニイが訊いた。
「なんかわるいみたいだなぁ。せっかく作った料理をタダにしちゃっていいのかなぁ。料理していた人はきっと叱られるんだろうね。」
「そうだろうねぇ。」
「このことでクビになったりしない?」
心優しいオニイはそんなことを気にしていたのだなぁ。
「こんなことで、クビにはならないよ。
でもね、他人様にお金をもらって食べ物を提供するということは厳しい仕事だからね、ああいう失敗はちゃんと注意してあげないといけないんだよ。」
「ふうん。」
いまいち納得のいかないらしいオニイにプロの仕事の厳しさを説く。
「もしお客さんに渡った商品に不具合があったら、そのお客さんにとってはその店の印象は『いやな思いをした店』のままいつまでも残る。『あそこは駄目よ』と何かの折に誰かに語る。そういう評判というのは仕事をする上ではとっても大事な事なのよ。」

「たとえば父さんの仕事にしても、不満足な作品を外へ出したらそれは直ちに『プロの仕事』を恥じることになる。それを梱包して発送する人にとっても、いい加減な荷造りをして事故があれば評判を落とす。仕事をするということは本来そんな厳しいものなのよ。」
たとえ、パートやアルバイトの調理人であったとしても、そういう失敗はしっかり叱られて二度と繰り返さないようにしなければならない。そういう当たり前の大事なことを、今のオニイにもしっかり伝えておきたいと思う。

そういえば、オニイはいまだに旧雪印ブランドの牛乳を飲まない。
特売大好きな私もなんとなくあの会社の牛乳はかたくなに避ける。
新しくなったあのブランドに「信用が置けない」というわけではなく、
プロにあるまじき背徳行為を人はそう簡単にチャラにしてくれはしないということを、いつか何がしかの「プロ」に成長していく子供達の心に刻み付けておくために・・・。

「でも、スパゲッティーはうまかった。」
確かにそこそこおいしいお子様ご飯に、子供達への職業教育、そして、私の貴重なHPネタを提供していただいて、全体としては大変リーズナブルなお食事をさせていただいた。
ところで、この日、オニイが学んだ「プロの条件」を、どこぞの養鶏業者のおじさんにもぜひとも学んでいただきたい。
食を支える仕事にこそ、自分に厳しいプロ意識をしっかり持ってもらいたいと心から願う。


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