月の輪通信 日々の想い
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オニイとゲンを剣道の道場へ送り、迎えまで一時間あまり。 いつも閉店前のスーパーをうろつき、数日分の食材を買い込んでくる。 大根、キャベツ、白菜。 見切り処分のぶりのあら、半額シールの張られた菓子パン、3こ100円の特売プリンを2パック。 そして、最後にお肉屋さん。
「58円の合挽きミンチ、1キロ・・・と200グラム。」 「あらら、今日はちょっと増えたね。」 なじみのおばちゃんが、ミンチをいつもの紙製の経木ではなく、透明のビニール袋に押し込んではかりに載せた。 「そうなのよ、ハンバーグ一回1キロではものたりなくなってきて・・・。かっこ悪いわぁ。いっつも安いお肉しか買わなくて悪いねぇ。」 「なにをなにを。毎度ありがとね。家族の食べる量がバンバン増えてるうちが花よ。」 おばちゃんは金曜の晩に私が剣道の待ち時間にふらふら食料買出しにやってくるのを覚えていて、 「今日は焼肉味付けが安いよ。」 とかって声をかけてくれる。 値段は安いし、スチロールのトレーを使わずに紙の経木やナイロン袋で量り売りしてくれるのも嬉しくて、「特価品キロ買い」で利用させてもらう。 「男の子は阿呆みたいに食べる時期がくるもんなぁ。1キロもミンチこねてもなくなるのはあっという間やったなぁ。」 おばちゃんが懐かしそうに笑う。きっとこの人にも大食漢の息子たちがいたんだな。 「夫婦で向かい合って、ちょっとええ肉をちびちび焼いて食べるようになったら、さびしゅうなるで。」 ふふっと笑って、背後へあごをしゃくる。 店の奥で、黙々と精肉を処理しているおっちゃんの影。 そうだね。ホントにそうだね。 「特価品キロ買い」ができるうちが花。
お休みの夕食は、定番のきのこハンバーグ。 大なべとフライパンをフル稼働して、しょうゆ味の煮込み風のハンバーグをど〜んと作る。 ずっしり重いミンチの袋を見つけると、 「やったぞ、明日はハンバーグ」 とよってくる子供らがいる。 両手いっぱい、手指が千切れそうなほどのレジ袋を車に積み込んで、 汗臭い稽古着姿の息子たちを迎えにもどる。 これが今の私。
「今のうちが花」 子育て中、あちこちでいただく先輩たちのキーワード。 ホントにそうだなと素直に聞けるようになってから、 子供たちとの生活は金の時間になった。
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