月の輪通信 日々の想い
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2004年01月30日(金) 嫌な感じ

学級閉鎖でへらへらしているオニイが、レトルトスパゲッティをこしらえてくれて、父さんと3人の昼ご飯。
一緒に昼のワイドショーをぼーっと見る。
久々に平和なのんびりランチタイム。
ああ、ほっこり。

「月10万円の快適暮らし」
ワイドショーの特集のタイトル。
雑誌編集者と銀座のOLが結婚。
釣り好きの夫は趣味が高じて、「漁師になりたい」とどこやらの島に移住。
月8000円の家を借り、地元で取れる魚やご近所で分けていただく野菜で食費は最小限。
かわいい子どもも二人も生まれた。
島の人たちは、いい人ばかり。
こんなにお金を使わず豊かな暮らし。
どうです、あなたも田舎暮らししてみませんか。

自然豊かな環境のなかで自給自足、野山を駆け回る子ども達。
そういう、田舎暮らしの番組って、嫌いじゃない。
物にあふれた現代。
本当に必要な物だけを自然から頂き、本来あるべき人の暮らしに立ち戻る。
心豊かな暮らしだなぁ。
子ども達を育てるのにもきっと素敵な所だろうなぁとため息をつく。

でも、今日のワイドショーのご夫婦の生活。
なんかちょっと違う。
おとうさんは釣り好きだから、一日釣果がなくてもへこまない。
漁師の親方に、「もらっていきます」と魚を一籠、分けていただく。
子ども達を連れて、近所の畑へ・・・
「お言葉に甘えて頂きに来ました。」と立派な大根を抜かせていただく。
家族の食料のかなりの部分を、ご近所からの頂き物でまかなう。
家計簿を見ると、お父さんの酒代が家賃よりも高い。
「ほら、田舎暮らしはこんなに経済的。暖かい島の人たちに囲まれて、子どもも大らかに育っています。」

ううん、いい話だけど、なんか後味悪いのは何故?
「この人達、何で収入を得てるんだろ?」
「なんか、もらうばっかりで、ちっとも還元してない人たちだねぇ・・・」
父さんやオニイとTVにつっこむ。
都会から「田舎暮らしがしたい」と飛び込んできた家族を「ま、ようきたね。」と魚や野菜を分け与え、子ども達の成長を一緒に見守る。
そんな度量が、確かに島の人たちにはあるのだろう。
でも、この「テイクアンドテイク」の関係、なんだか気持ち悪い。
都会からやって生きた若い夫婦が、新鮮な魚やお野菜の対価として、島の人たちに還元できる物はないのだろうか。
島の人たちの大らかな生活力にパラサイトしている都会人。
そんな気がして気持ち悪いのは、「対価交換」の物質文明に毒された私の心持ちの狭量さのせいなのだろうか。

番組の取り上げ方にも問題があるのだろう。
「田舎暮らしはこんなにお金がかからないよ。」
田舎暮らしの快適さをいちいち貨幣の価値ではかる。
その上で、「自然のなかで育つ子どもって、たくましくっていいですよね。」とお決まりのコメント。
見慣れたコメンテーター達の物欲しげなため息も鬱陶しくて、
なんだかいやぁな感じが残った。

自然のふところは深い。
もしかしたらそんな細かいことにこだわらなくても、人はやすやすと豊かに生かせていただけるのかもしれない。
けれども、その自然の恵みをありがたく頂く感謝の気持ち。
それは、都会の当たり前の日常の中にもきっとあるもの。
薄っぺらな田舎暮らしに憧れるのはもうやめよう。
田舎でもない、都会でもない、中途半端な町に住む主婦のつぶやき。
これが今の私の暮らし。


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