月の輪通信 日々の想い
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先日、お仕事で急に必要になったものがあって、久しぶりに車で町へ出た。 ついでだから、父さんの作業用の靴だとか、アユコのビーズのパーツとか、あれこれ買って超特急で帰ってきた。 買ってきたものをそれぞれ渡して、ふっと気がついた。 「アタシの物がなんにもない。」 年末、年始にかけて、あんなにあちこち走り回り、「誰かの為のもの」をいっぱいいっぱい買ったというのに、そういえば「わたしのためのもの」は靴下一枚買っていない。 なぁんだかな。 ちょっと悲しくなって、ためいきをついていたら、 「電子レンジ、買うんでしょ。」 とアユコが慰めてくれる。 たしかに結婚と同時に買った電子レンジ、そろそろ買い換えの予定。 それはそれで嬉しいんだけど、それってね、なんかわたしだけのものじゃない。 わたしが欲しいのはそんなものじゃないんだよ。
・・・・で、さて、わたしの欲しいものって何? 若い頃には欲しいもの、いっぱいあったよな。 きれいなヒールの靴、コートの色に合わせたスカーフ、お気に入りの作家の本。 かわいいイヤリング、ガラス細工のモビール。計り売りのオーデコロン。 今のわたしの欲しいもの。 普段履きの靴、エプロン兼用のトレーナー、 庭作業用のよく切れるカマ、PC用の足温器。 う〜ん、なんだか違う。 「わたしの欲しいもの」を数え上げるときのあの、ときめくような嬉しい気持ちが湧いてこない。 そもそも、絶対絶対欲しい!って気持ちがいまいち足りない。 だから、自分のものが買えないんだな。
アプコの好きそうなピンクのトレーナー、アユコの喜びそうなかわいい文房具。 ゲンの欲しがりそうな飛行機のおもちゃ、オニイの好きなパン、 「きっと喜ぶだろうな」ってお買い物をするのは楽しい。 別に「自分のものを我慢して・・・」って感覚もない。 これって、とっても幸せな事なんだけど、でも、それでいいのかな。
近頃気になるCM 彼が彼女に「ね、君の2番目に欲しいものはなに?」 彼女のツッコミ(一番だろ、普通) 結局、今の私の欲しいものって、所詮「2番目に欲しいもの」なんだな。 毎日の生活に必要に迫られてて、いつでも買えばいいんだけど、買ってもあんまりときめきそうにないもの。 それはそれで、買えばいいんだけど、なんだかつまらない。
「欲しいもの、買っちゃえば?」 父さんに背中を押されて、へそくり片手に買い物に出た。 田舎のスーパーをぐるぐる回って、結局買ったのはお買い得品のスニーカー一足。 あかん、小心者だなぁ。 しかも悲しいことに、普段履きのオンボロスニーカーを真新しい白いスニーカーに履き替えたら、それだけで結構、ときめいちゃうんだな。 「ちょっと山でも歩いてみるか」って気持ちになってしまうお買い得な私。 だめだめ。ちゃんとまじめに目を開けて、「一番欲しいもの」をさがさなくっちゃ。 まだまだ、「欲しいものはなぁんにも無い」なんて悟りの境地に入ってられない。
「あ、オカアサンの靴、ピッカピカ!」 アプコが新品の靴を見つけてピョンピョン跳ねる。 登園の道をいつもより軽い足取りで下っていく。 「オカアサン、新しい靴は速く歩けるの?」 ううん、気のせい、気のせい。 オカアサンはオトナだもん。 おニューの靴ぐらいで、ピョンピョン飛び跳ねたりしないもん。 ・・・今日、オカアサンが歩くの、そんなに速い?
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