月の輪通信 日々の想い
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2003年12月02日(火) 戦争を始める人

遠い国の戦場で、日本の外交官が襲撃されたという。

TVでは亡くなった方のご遺体をお迎えに行かれる家族の方の映像が、繰り返し流されてい
た。

まだ、お父様の死を理解出来ないであろう幼い坊やのあどけない表情に胸が痛む。

奥様は坊やに、お父様とのお別れをどんなふうに説明して上げるのだろう。



「現地外交官」「残留関係者」

危険なニュースの頻発するイラクの地で働いておられる方々をそんな言葉で呼んでいるときに
は、思いもつかなかったその人たちの家族の存在。

もちろん働き盛りの若い有能な人たちに、大事な家族や親類がいるのは当たり前。

天涯孤独でいつ死んでも惜しくない老人や、向こう見ずで怖い者知らずの無鉄砲な若者に、国
と国とを結ぶ困難な仕事を任せられる訳ではない。

我が子や恋人や大事な「守るべき物」をもった人だからこそ、我が身の危険を知りつつも戦地
でのお仕事に邁進しておられたのであろう。

どんな想いで、かわいいお子さんや奥様を残して任地へ向かわれたのだろう。

本当に、本当に、心が痛む。



今日、七宝焼の教室で、なくなられた外交官の方々の話題が出た。

90歳に近い先生は、声を落として「お気の毒に」と何度も繰り返される。

「馬鹿な戦いは早くやめなくてはいけませんよ。

大東亜戦争の時だって『なんであんな馬鹿な戦争を私たちは始めてしまったか』と今でもしきり
に思いますよ。」

あの戦争の時、先生はおいくつであられたか・・・。

当時からただ市井の人であった先生が、まるで我が事の失敗を語るように、「私たちは」と過
去の戦争を振り返られるのに、私は衝撃を受けた。

軍人や政府や「国家」という化け物ではなく、まさしくこの国の空気を吸って生きていた「私」の
事として、過去の過ちを深く心に刻んでおられるということが、私には驚きであり、発見であっ
た。



日本の自衛隊の人たちを同じイラクの地へ送り込もうという。

「戦はしない」といいながら、武器を掲げて動員される軍隊だ。

二人の外交官の方のように、傷ついたり殺されたりする方もでてくるだろう。

「自衛隊派遣」

その言葉のもとに、戦いの地に送り出そうとしている人たちは、誰かの息子であり、誰かの夫
であり、誰かの大切な父でもある人たちだ。

アメリカがどうの、小泉さんがどうの、そして日本の憲法がどうのといいながら、私たちが戦場
に送ってしまおうとしているのは、若い血肉を持った、誰かの大切な人である人たちなのだとい
うことに、今日改めて気がついた。



だからといって、今の私に何が出来るという訳ではない。

TVの画面に映る遺族の方の悲嘆にもらい泣きし、「平和は大事だよ。」と子ども達にお説教を
たれる。

日本中の大半の善良な国民が、同じ様なレベルで遠い国での戦いの有様を見守っている。

これでいいのか。これでいいのか。



私は人が何の為に闘うのか、子ども達に説明する事が出来ない。


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